防火水槽の新しい融雪システム
降雪のある寒冷地では、防火水槽上部に積もった雪で、いざと言う時に取水口の位置を探すのに手間取ったり、ふたが凍結していたりして消火が遅れることがあった。
これに対し、コンクリート2次製品メーカーのホクコンと福井大、若狭湾エネルギー研究センター3者が共同開発した防火水槽の新しい融雪システムは、冬季でも10℃前後ある水槽内の水の熱を「ヒートパイプ」という装置で取水口部分に運んで雪を溶かすため、融雪で悩まずに済むことになるというもの。
「ヒートパイプ」の原理と効果は?
新しいヒートパイプは、エアコンに使われている代替フロンを循環用の液体(冷媒)として使用。高温部分に、液体から気泡を発生させる構造の「気泡生成部」を設置し、気泡の浮力を利用して低温部分に液体を循環させ熱を伝導させるため、ポンプを使わずに水の熱を地上の取水口部に運ぶことができる。
従来の金網の毛細管作用で液体を循環させるウイック式などに比べ、パイプの上下位置やパイプの太さなどに影響がないのが特徴という。
今冬、防火水槽の鉄蓋(ぶた)周辺の融雪に使用した実証実験を行い、従来型に比べ2倍以上の熱輸送効率を確認したもので、鉄蓋枠の温度は雪が解ける0度以上を維持し、凍結防止の効果もあったとのこと。
今後の展開は?
研究に参加しており防火水槽の製造販売を手掛けるホクコンは、自治体向けに今年末にも発売するといい、費用は設置済みの水槽に取り付ける際には工事費を含め50万円前後を想定、年間100件の販売を目指している。
また同センターは今後、地中熱源を利用する冷暖房システムなど、さまざまな用途の開発を進める方針だ。
もともと、文部科学省の都市エリア産学官連携促進事業などの補助を利用して20年度から3カ年計画で研究開発を進めていたもの。
省エネに効果もあり、この先の利用拡大に期待したい。
(財)若狭湾エネルギー研究センター通知