鉄鋼を超える比強度の汎用プラスチック創製に成功
広島大学 大学院総合科学研究科の彦坂正道教授と岡田聖香博士研究員らは、鉄鋼を超える比強度(注1)を有し、水より軽く安価(注2)で、リサイクルが可能なシート状の超高性能汎用高分子材料(汎用プラスチック)の創製に成功した。
同教授らは、融点以下に冷やした高分子の融液(注3)を引っ張って結晶化させるという極めてユニークな製法により、代表的汎用プラスチックであるポリプロピレンの結晶化度(注4)をほぼ100%に高めることに成功し、引張強度をこれまでの7倍以上の230MPaに高め、比強度を鉄鋼の2~5倍にしたという。
しかも超高性能高分子材料は、高価でリサイクル困難なエンプラや繊維強化プラスチックなどとは異なり、通常の汎用プラスチック並みに安価で成形し易く、リサイクルが可能という大きな利点を持っているとのこと。
成果には大きな期待も
当成果は、同教授らによる「高分子結晶化メカニズムの解明」をアイデアに基礎科学手法を組合せて行い、結晶の向きが揃った高強度のNOC(ナノ配向結晶体)として得られたものになる。
これにより今後、自動車や産業用の鋼板をはじめ金属やセラミックス、エンプラ・汎用などの従来型プラスチックの代替も含め、国内外で広く普及させることで、低コスト・省エネルギー・省資源・低炭素の持続型社会づくりに貢献することが期待されるという。
この研究成果は、2010年6月発行の日本の学術雑誌「Polymer Journal」に掲載される予定といい、同研究グループは、共同研究企業と協力しての産業化を目指している。
なお当成果は、以下のJST産学連携事業にて得られたものとのこと。
事業対象:「研究成果最適展開支援事業
研究開発資源活用型」
研究課題:「"超臨界伸長成形機"開発による
超高性能高分子創製と製品化」
研究期間:平成21年9月~平成24年3月
・研究開発資源活用型は、産学官連携により蓄積された研究成果、人材、研究設備等の研究開発資源を有効に活用し、実機レベルでのプロトタイプ開発等、企業化に向けた研究開発を行うプログラム。
・当課題は、実機プロトタイプの超臨界伸長成形機を開発し、実用サイズの超高性能高分子材料の成形、量産技術を確立し、製品化するもの。
<用語の解説>
(注1) 比強度: 引張り破壊強度を比重で割った値。
異種材料の強度を相互比較する場合に用いる。
(注2) 安価: ポリプロピレンやポリエチレンなどは、
百数十円/kgと安価。
(注3) 融液: 一つの物質のみが融けた状態の液体のこと。
2つ以上の物質が溶けた状態は溶液という。
(注4) 結晶化度: 固体に含まれる結晶の割合。
共同発表内容