インターネットの力
アメリカのジャーナリストや研究者たちの中には、容易に活用することができるインターネットという媒体を通して、人々がある種のイデオロギーまたは偏見などを、それを主張しているサイトなどで強めてゆくことで、社会の中での分断化・差別化が進んでいるのではないかと懸念している人たちがいる。
インターネットの浸透力、影響力を考えれば、そのような懸念も確かにうなずけるが、果たして実際にそのような現象が起きているのだろうか。
イデオロギーによる分断化
シカゴ大学ビジネススクールの経済学者たちは、この度発表した論文「Ideological Segregation Online and Offline(オンラインとオフラインでのイデオロギーによる分断化 の意)」の中で、純然たる意味でのイデオロギーによる分断化がインターネットユーザーたちの間で起きているという確率は低いと結論づけた。
彼らの調査においては、最もイデオロギーによる分断化が見られるメディアは全国紙であった。その次にインターネット。そして、ケーブルテレビ、雑誌やテレビ放送といったメディアが続く。さらに調査結果からは、インターネット上でのイデオロギーによる分断化が進行していると明確に断言することはできないという。
その理由は
あるイデオロギーを過激に主張するサイトはネット上確かに多いが、それを読む読者側がそれほどに過激ではないということ。多くのユーザーたちが、比較的に偏りの少ないYahooやAOLといったプロバイダーを選んで、そしていつもそこから情報収集をしていることが理由として挙げられる。
一般的なユーザーがこのようなインターネット利用をするのに対して、政治に強い関心を持つユーザーたちは、インターネット上で保守、リベラルなどの様々なイデオロギーの主張をチェックしている。彼らが様々な情報源からニュースを雑食する結果、イデオロギーの偏りを強めてゆくことが阻まれているというのだ。
この研究で示された各メディアのイデオロギーによる分断化を示す指数は以下の通りである。
全国紙: 10.4
インターネット: 7.5
ケーブルテレビ: 3.3
雑誌: 2.9
テレビ: 1.8
シカゴ大学ビジネススクール論文 'Ideological Segregation Online and Offline'(英語)
http://faculty.chicagobooth.edu/jesse.shapiro/research/echo_chambers.pdf#search='Ideological%20Segregation%20Online%20and%20Offline'THE WALL STREET JOURNAL BLOG 'Researchers: The Internet Isn't Polarizing America'
http://blogs.wsj.com/economics/2010/04/19/researchers-the-internet-isnt-polarizing-america/