海外インターンシップは転機となるか?
不景気に揺れるアメリカ経済は、深刻な就職難を引き起こしています。仕事を見つけることができない人々は、より良い機会を求めて、インターシップを行います。現在、就職難に直面しているアメリカの学生や若い世代が好むのは海外でのインターンシップ経験です。
海外へ流出する求職者
26歳の女性は、勤め先から解雇を宣告されたあと、求職活動を開始しましたが、全くと言って良いほど手応えを掴むことができませんでした。その後彼女は海外での経験を積むべくイスラエルでのインターンを経験します。1ヶ月後、貴重な経験で手応えを掴んだ彼女は、シカゴの学校で仕事を見つけました。
彼女のような若い世代が、アメリカでは増えてきているといいます。1500の教育機関を対象に行った調査によると、2000年から2008年の間に、海外インターンシップの数は2倍にまで増えました。
2009年の数字は、就職難の煽りを受けてさらに伸びるだろうと予測されています。現在10%のアメリカ人は就職先を見つけられず、その割合は若い世代で特に高くなっています。
就職難の中で注目を浴びる海外就労経験
現在21歳の大学生は、ロンドンの企業をインターンシップ先に選びました。地元シカゴにはジャーナリストを目指す学生が大勢いて、競争の激しさが目にみえていると彼は語ります。
「海外での経験を持って大学を卒業すれば、それを足がかりに明るい将来を手に入れることができる。」
雇用者は、世界の経済と文化を理解できる人材を求めていると、彼は確信しているようです。
英語を話せる環境に育ったアメリカ人にはアドバンテージがあります。国際語をしゃべれることは、世界を舞台に活躍するにあたって、障害をひとつ減らせるということを意味します。しかし、それ以上ではありません。現在企業が求めているのは、複数の言語を操れる人材です。
英語とスペイン語を流暢に話し、フランス語とイタリア語を学んだ経験のある22歳の別の学生は、南アフリカなどでボランティア活動もした経験があります。
「どこにだって行くわよ。」
12月の卒業に向けて、彼女のやる気は十分です。
必ず将来を約束できるものでもない
一方で、海外経験が就職に役立ちはしないと実感している人々もいます。ニューヨークでスタイリストとして働いていた30歳の男性は、不景気におされてたった3ヶ月で職を失いました。
彼はすぐさま就労経験を求めてロンドンに渡り、無償の仕事に就きます。それから就職できずに1年、就職への見通しは明るくなってきたと彼は語りますが、同時に「もっと期待していたのに」と、落胆する気持ちを隠せません。
「海外での経験は、自分の売り込み材料を七色に輝かせてくれると考えていた。だって、他に何ができる?この世でできることは全てやった。もう一度仕事に就くためにね。」
21歳のシカゴの大学生も、同じ悩みを抱えています。彼女は中国で英語を教え、プラハで編集のインターンシップも行いました。世界で仕事をした経験を持つ彼女に、採用の返事をする企業はありません。
「20以上の企業に自分の履歴書を送ったわ。どこも返事をくれなかった。たったの1社もよ。」
この不景気の中で仕事を失っている人々は、自分よりも貴重な経験を積んだ人たちで、自分は彼らにも及ばないのだろうと、彼女は考えています。
海外経験にかける期待は止まらない
しかし、海外インターンシップに集まる期待と羨望の眼差しはとどまることを知りません。海外インターンシップは、急成長中の産業です。インターネットの存在で、すでに国境の存在感は薄れ始めていると専門家は語ります。
「歴史的に見ても、今が一番仕事を見つけにくい時代でしょう。ほかと差をつけるために何をすればいいのか?私はその答えが、決して大学の学位ではないと確信しています。」
また、専門家は、海外で学ぶことと、海外で働くことは違うと指摘しています。シンガポールで半年の常勤、さらに中国のアメリカ大使館での5ヶ月の就労経験を通して、この専門家は、「留学生はある意味保護されている」と言います。
「アメリカ留学生は、大学の支援を受けているし、他のアメリカの学生に囲まれていることが多い。」
と、付け加えます。
「働くには、住む家を探し、電話線を引いて、銀行口座開設の手続きも、自分で行わなければならない。」
生活に関わる全てを自分で行わなくてはいけない点で、留学は海外での就労経験に及ばないというようです。
Americans chase internships abroad as a gateway to work