死刑囚を担当する弁護士インターン
アンナ・ドーソンは27歳。オーストラリアの「Reprieve」という組織に所属する弁護士のインターンです。この「Reprieve」は人権保護を掲げる組織で、死刑囚の弁護をボランティアで行うことも活動内容のひとつにしています。
オーストラリア以外にも、イギリスやアメリカに存在し、各地に弁護士やソーシャルワーカー、消防士などを派遣したりしています。派遣の旅費、およそ8000ドルも、インターンが自費で賄います。
アンナ・ドーソンさんの経験
アンナ・ドーソンさんは、芸術学と法学の学位を持ち、このインターンプログラムの間に、書類整理とコピーの雑用もあわせて、たくさんの仕事をこなしてきました。
弁護士インターンとしての仕事には、調査、提出書類の作成、そして刑務所にいる依頼者を訪問することも含まれてます。いつものオレンジ色のオーバーオールに身を包んだ殺人犯と5時間も顔を突き合わせるのです。
彼女が死刑囚と面会するときに持っているのは、メモ帳と飲み物を買うための小銭だけです。「死刑囚を訪ねることは、ちょっとした挑戦だった」と、彼女は語ります。しかし、実際に面会した死刑囚にはたくさんの女性の守衛がついていて、警護も万全でした。
死刑囚のもとを訪れることは、法律上の意味合いと社会的な意味合いの両方を持ちます。ある日彼女が尋ねた死刑囚は、死刑執行日を間近に控えていました。彼女の役目は、まず法律上、彼ができることを手助けをすることにあります。しかし同時に、人間的な社会活動を手助けすることも重要です。
その死刑囚は彼女を歓迎していました。そしてインターネットのおかげで、話題になっているニュースも知っていて、ビクトリア州の山火事などについて話すことができました。死刑囚の長い刑務所暮らしでは、やがて家族も訪問しなくなるということもよくあります。そうなると、ドーソンさんのようなインターンが、彼らにとって唯一の訪問者となるのです。
ドーソンさんは、この仕事に満足しています。
「例え環境が変わっても、書類作成や調査などの弁護士としてのスキルはどこに行っても通じる。」
と、彼女は語ります。
「人生で生と死に直面する状況はなかなかない。でもこの仕事はそのうちのひとつよ。」
彼女は死刑制度に反対しています。
組織が目指すところ
組織を率いる弁護士ベン・カイリーさんも、「死刑に相応しい人間などいない」と語ります。この仕事に就く限り、死刑囚が有罪なのか無罪なのかということは問題ではないのだそうです。
彼の仕事のひとつに、アメリカの弁護士に向けたマニュアル作りというものがあります。死刑囚はよく、「動物園の動物になった気分だ」と彼らに話すことがあるそうです。死刑に反対する彼らが目指すのは、まず死刑囚を人間として認めさせることです。
「陪審員にとって、自分の父親、兄弟を死刑に追いやることは辛いことだ。死刑囚も、ひとつの行いだけでなく、彼らの生き様で判断されるべきだ。」
カイリーさんは、中流階級の死刑囚にはあったことがないとして、ほとんどの死刑囚の出身が貧困層であり、アルコールやドラッグ中毒、教養不足がその背景にはあると指摘します。
「彼らは恐ろしいことをしたかもしれない。だけどそれでも人間なんだ。」
Intern volunteers in life or death situation on US death row