老人福祉・介護事業の倒産状況
企業信用調査会社の東京商工リサーチは、2019年1月~6月までにあたる上半期の「老人福祉・介護事業」の倒産状況を公開した。
それによると、倒産件数は55件となり、2000年に介護保険法が施行されて以降で最多となった。
業種別で倒産件数が最も多くなったのは、ホームヘルパーなどの「訪問介護事業」で32件。前年度の18件から急増している上に、全体の半分以上を占める数字に達している。
続いて、デイサービスなどの「通所・短期入所介護事業」が13件、「有料老人ホーム」が5件となったが、この2業種は前年から倒産数が減少している。
倒産の原因別では「販売不振(業績不振)」が40件で最多となった。昨年の同期は26件だったので急増していることが分かる。次いで、「事業の失敗」と「運転資金の欠乏」が各4件となった。
また、設立別では、2014年以降に設立した5年未満の新規事業者が17件と全体のおよそ3割を占める結果となった。
ヘルパーの人材不足が倒産に影響
2018年12月に全国ホームヘルパー競技会が公開した介護報酬改定に関するアンケートによると、人材確保・育成・定着における課題として「(ヘルパーの)募集をしても応募がない」と回答した事業所が88%にのぼるなど、ヘルパー不足が最重要課題となっている。
介護報酬改定で必要性が指摘された人材確保の参入促進策として、人材の裾野を広げる政策も取られてる。そういった取り組みにより参入障壁が低くなる一方で、資金やノウハウが乏しい企業が安易に進出している問題も浮き彫りになっている。実際、経営が破綻するケースでは新規参入の小・零細事業者が目立つ。
「老人福祉・介護事業」の倒産増加は、介護サービスを利用している人にとっての負担となる、また不利益を及ぼすケースが増えることも意味している。安定した介護サービスの提供には、介護事業者の意識改革だけでなく一定の公的支援も必要になっている。
(画像は東京商工リサーチのHPより)
東京商工リサーチ
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20190704_03.html