自動運転への期待と法的課題
一般社団法人 日本損害保険協会では、2014年8月以降進めてきた自動運転の法的課題の研究に基づく報告書を作成した。
法律上の損害賠償責任の考え方を整理したもので、保険商品のあり方を研究したものではない。自動運転への期待と法的課題に関する研究の中間報告という位置づけである。
事故時の損害賠償責任の考え方を整理
自動運転進歩の効果として、交通事故の削減、環境負荷の軽減、高齢者等の移動手段の確保が期待されている。
一方で、事故発生時には、従来と異なる責任関係が生じる可能性がある。日本損害保険協会では、事故時の損害賠償責任を中心に自動運転の法的課題について、有識者も交えて研究を重ねてきた。
「加速・操舵・制動のいずれかの操作をシステムが実行」をレベル1、「加速・操舵・制動のうち複数の操作を一度にシステムが実行」をレベル2。レベル3は、「システムが要請したときのみドライバーが対応」、「ドライバーが全く関与しない」レベル4と分類されている。
この報告書では、レベル3までは現行法(自動車損害賠償保障法(自賠法)および民法)に基づく考え方が適用可能。レベル4に関しては、損害賠償責任のあり方を検討する必要があるとしている。
今後、国際的動向の把握、社会の趨勢を踏まえ、自動車に関連する法令等を見直すことが必要になるとしている。
その他の課題
「事故原因の分析体制の構築(ドライブレコーダー、イベント・データ・レコーダー等)」「製造物責任の可能性(システムの欠陥による事故の場合)」「サイバー攻撃による事故の可能性」「救済すべき被害者の範囲」「損害保険実務(過失割合の複雑化)」が個別課題としてあげられている。
日本損害保険協会は、今後も自動運転に関する国内外の検討動向を注視しつつ、必要に応じて検討および意見等の発信をしながら、安全・安心で円滑な道路交通社会の実現に寄与していくとしている。
一般社団法人 日本損害保険協会のニュースリリース
http://www.sonpo.or.jp/news/release/2016/1606_05.html