株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)は、北海道テレビ放送株式会社(以下、HTB)とともに、スマートフォン向けエリア限定Wi-Fi利用放送技術に関する実証実験を実施したことを発表した。
同実験は、NICT(独立行政法人情報通信研究機構)がJGN-X(NICT研究用ネットワーク)を用いて行った未来型放送配信技術に関する実験の一環として、2月7日、8日の2日間にわたり、さっぽろ雪まつり大通り会場「雪のHTB広場」限定で、会場内のライブ中継や録画映像を、Wi-Fiを使って複数のAndroid対応のスマートフォンに同時配信(マルチキャスト)することに成功したというもの。
また、今回の実験では、2種類の映像を同時に配信し、スマートフォン側で映像を切り替えることにも成功し、さらに、NICT大手町ネットワーク研究統括センターにも同じ映像を同時送信し、複数拠点でのエリア限定Wi-Fi利用放送が行われた。
同実験により、スマートフォンの台数に影響されることなく、広範囲にわたり高品質な映像を複数同時に配信できることが実証され、新しい映像配信技術の優位性が確認されたとのこと。従来のエリアワンセグ方式に比べて、アプリケーション開発の自由度が高く、無線局免許の取得も不要。伝送帯域に余裕があるため、より高い解像度の映像配信が実現できると期待されている。
さらに、今回の実験で使用した構成では、1台のWi-Fi親機で200台以上の端末に対して同時に映像を配信することが可能であることも実証され、今後、イベント会場やスポーツ施設、ショッピングモールや災害避難所といった特定のエリア内での活用が考えられよう。
ちなみに、マルチキャストとは、1つの送信点から特定の複数受信点に同一内容のパケットを送信する場合に利用する技術のこと。1対1の通信であるユニキャストに対して、伝送の手間と利用帯域を減らすことができる。また、エリアワンセグは、地上デジタル放送のワンセグ・サービスの技術を利用して、限られたエリアにおいてワンセグ搭載携帯電話に映像・音声やデータを配信する技術のこと。
ベンチャー事業がまず考えるのは、既存勢力のすき間を狙うこと。サービスを提供する限定されたエリアの境界線付近が「すき間ビジネス」の主戦場となるのかもしれない。ただ、スマートフォンのゆく道が限定サービスなのか、既存の閉鎖性の強い分野を巻き込んだ開放への動きとなるかは、いまだ見えないようだ。
株式会社電通国際情報サービスリリース