100ベクレルを超えた地域でも米作りを
福島県の米の作付けについて、26日、JA福島中央会が作付けできるかどうかの判断基準を示した。
新たに作付けする米が100ベクレルを超える危険性の大小で「総合的に判断」するという。
農家はなるべく作りたい
JA福島中央でも、方針を決定する過程では、組合によって意見が大きく分かれた。農地は、いったん放棄すれば、回復に長い年月を要する。
そのため「なるべく作りたい」というのが農家の本音だ。除染や全袋検査が前提となるが、効果については疑問符がつく。
JA福島中央会がまとめた方針では、昨年収穫された戸目が500ベクレルを超えた地域については、国の方針通りに作付け制限を行う。
昨年収穫された米の放射性セシウムが100~500ベクレルだった地域は、さまざまな要因を考慮して総合的に判断する、とした。
今年もセシウム米が市場に
昨年収穫された米も、暫定基準値である500ベクレル超えが再三見つかったことから、消費者の不安が高まり、出荷は滞っている。
地域によってばらつきはあるが、土壌のセシウム値が、むしろ事故直後にくらべ上昇し続けている場所もある。
同一の地域、同一の水系でとれたコメでも、セシウムの数値がまったく違うケースも報告されており、なにが数値を決める要因なのか、不明のままだ。
昨年のコメを基準に玉虫色の判断を下せば、今年もセシウム米が大量に収穫される。
米を作らず補償を
群馬大学の早川由紀夫教授は昨年、Twitterの中で下記のように述べて批判された。
セシウムまみれの干し草を牛に与えて毒牛をつくる行為も、セシウムまみれの水田で稲を育てて毒米つくる行為も、サリンつくったオウム信者がしたことと同じだ。福島県の農家はいま日本社会に向けて銃弾を打ってる。
同教授はまた、粉ミルクからセシウムが検出された明治と福島の農家を比較している。
粉ミルクつくった会社は悪くて、毒コメつくった福島農家は悪くないって、どういう考え方だろか。会社員も農家もどちらも収入のためにやった。前者は(たぶん)善意、後者は悪意だ。
言葉は厳しいが、正論である。農家はたしかに被害者だが、だからといって危険性が疑われるコメを市場に出荷すれば、悪意の加害者たりうる。
危険性をはらむコメ作りに固執するのではなく、生産をいっさい止め、東京電力や国に最大限の補償を求めるべきだろう。
事情を悪化させる民主党とJAの関係
未曾有の大災害に際して、民主党政権下であったことが、被害を拡大させてきた。コメについてもしかりだ。
JAが握る農家の票はこれまでほとんど自民党に流れてきた。農家の訴えを聞く「義理」がない民主党政権は、補償についても冷淡な態度が垣間見える。
JAが大反対するTPP参加について、野田総理が再三参加の意向を発表するのも、この関係によるところが大きい。
農家がコメを作らざるを得ない理由の一部は、民主党政権が補償してくれないのでは、との不安にもある。
◆早川由起夫 Twitter
http://twitter.com/HayakawaYukio◆福島民報
http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2012/01/post_3132.html