金子氏無罪に 最高裁が検察の上告を棄却
12月19日、ファイル共有ソフト「Winny」を開発・公開したことで著作権法違反幇助の容疑で起訴されていた金子勇氏に対する検察側の上告を最高裁第三小法廷が棄却。無罪が確定した。
この訴訟について、ネット上では司法が最先端技術をつぶした、とする声がわき上がっている。
単に「技術」を提供しただけで
Winnyは2002年、当時東京大学大学院情報理工学系の助手であった金子氏が無償公開したファイル共有ソフトだ。
P2Pという当時世界最先端の技術を用い、あらゆるファイルを高速でやりとりできるもの。
ただその性能の高さゆえ、映画や動画など著作権に抵触するファイルの共有が流行。さらにWinnyに寄生したウィルスにより、個人や企業の情報が多数流出することとなった。
京都府警は2004年、この事態をもって、技術を公開した金子氏を「著作権法違反幇助」の容疑で逮捕。その後、金子氏は起訴され、2006年には京都地裁で有罪判決が下された。
金子氏は判決を不服として控訴し、2009年に大阪高裁で逆転無罪判決を得る。ただし今度は検察側が上告。2011年12月19日にこの上告は棄却された。
ノンフィクション作家の松浦晋也氏は、日経オンラインに掲載された記事の中で、そもそも起訴された経緯について疑問を呈している。
Winnyは単に効率的な情報共有・伝達の仕組みにすぎず、これを犯罪的技術というなら、印刷から放送まで、すべての情報共有・伝達を目的とした技術が違法ということになる、というのが氏の主張だ。
司法がつぶした大きなチャンス
P2Pは現在ではクラウドやスカイプなどに用いられる花形技術の1つである。7年前、金子氏が開発した当時は、最先端の技術であった。
司法がこれを「違法」と誤認したため、その後日本では花開くことなく、海外で大きく育ち豊かな実りをもたらした。
今回の京都府警、検察がおかした失敗は、単に金子氏に対して多大な迷惑をかけただけでなく、日本のIT産業そのものに大きなダメージを与えるものとなった。
金子氏の担当弁護士はブロゴスに寄せた記事の中で、日本でチャレンジしていく技術者に対して、こう語った。
「この日本で、世界中が驚くような突き抜けたものを作ってみろ、 逮捕されるぐらい凄いものを発表してみろ。それで、捕まったときは壇を呼べ。 あ、貯金も忘れずにね」
壇氏を頼むより、海外に出て行く技術者が増える可能性が高い。検察の失敗は高くつく。
◆Winny wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/Winny