近年、広告主が自社広告を掲載する媒体を選ぶ判断材料として、広告効果の「見える化」が強く求められている。広告を出す意味は、最終的な結果として売り上げに繋がればこそ。それを受け、雑誌関連の業界団体が、雑誌広告効果測定の標準指標を検討し始めている。
4社が広告効果について調査
大日本印刷株式会社、株式会社エムズコミュニケイト、株式会社主婦の友社は、株式会社資生堂の協力を得て、女性誌における広告効果を調査した。手法や設問内容の検討を行い、雑誌広告効果測定のケーススタディとして行った。
株式会社エムズコミュニケイトは、大日本印刷株式会社から社内起業で誕生した、企業内独立事業会社。マーケティングリサーチやコンサルティング事業などが主な業務だ。「大企業」で培ったコミュニケーション力、生活者の感性とベンチャースピリッツで、企業と顧客が「笑む図(エムズ)」を目指している。
調査方法は、インターネットを介した、パソコンや携帯でのアンケートだ。2010年10月~12月に、資生堂「ドライゾーンリペアエッセンス」に対する意識と行動、また回答者の情報感度についても調査した。調査対象は、主婦の友社ネットアンケートクラブRayの登録会員1,922名だ。このクラブは、累計会員数が約4万人。誌面向上のため、アンケートを通して読者の意見を聞き、編集部からはメールマガジンやプレゼントなどを案内している。
女性誌における新商品の広告効果
<図1:広告効果の全層および情報高感度層での比較>
アンケートの結果、新商品の広告は、情報高感度層への影響があることがわかった。この層がよく読む女性誌に、女性向け新商品の広告を出すと、高い効果を得やすく、商品イメージや購買意欲の上昇が見られた。
情報高感度層とは、新しい情報や流行に敏感で、周囲の一歩先を行く消費を行う人々を指す。彼らは、周囲に情報を伝えるコミュニケーション力とネットワーク力が強く、彼らが集まることで、市場への影響力が増大する。
具体的なアンケート方法として、広告を見ていないグループ1と、見たグループ2に分けて調査した。情報高感度層において、女性誌発売後に商品広告を見た人を含むグループ2では、「購入したい」と回答した割合が、グループ1に比べて8%増と高くなった。一方で、全体では女性誌発売の前後に関係なく、購買意欲の大きな変化は見られなかった。
これは、情報高感度層が、新情報を知るといち早くそれを試したいという思いが、そうでない層よりも強いことの現われだろう。一方、そうでない層は、購買の際に新商品であるということにあまり左右されないことを表している。
また、純広告と編集タイアップ広告では、広告効果があらわれる項目や値が異なった。「しっとり感」など、商品自体のイメージは純広告での値が大きく上昇した。一方で「効き目がある」など、商品の効果・効能イメージは、記事広告での値が大きく上昇した。広告の出稿形態、訴求内容によって広告効果があらわれる項目や値が変化することがわかった。
純広告は、企業が提案するビジュアルやコピーの統一感があり、その広告のクリエイティブのインパクトが出やすいため、商品イメージが一瞬で読者へ伝わる。また、タイアップ広告は、商品の具体的な紹介記事が含まれるため、読者にとって商品への理解や共感が起こる。そうした特性の違いにより得られた結果ではないだろうか。
女性誌購読者の高感度層比率
<図2:Ray購読者・女性誌購読者・一般女性の情報感度別分布図>
情報高感度層の比率調査として、商品情報の確認度合い 、情報発信の有無、自分の生活・個性を大切にするかなどを聞いた。その結果、女性誌購読者の高感度層比率は、一般女性の約1.5倍だった。これは、女性誌が高い確率で高感度層に情報を届けられる媒体ということを表している。また、高感度層のブログ・SNS・ツイッターを通じて、口コミが広がることも大いに期待できる。
現代は、消費者の趣味嗜好が多様化し、その内容も成熟している。売り手と買い手、情報の発信者と受信者の境界が、曖昧で均質になってきたのだ。このことは、従来のマーケティングのみでは、活力ある商品・サービスを生み出し、消費者を牽引できないことを表している。企業は、消費者の目線で日常生活を再考し、市場をデザインすることを迫られている。そのためにも、こうした調査は欠かせないキーワードとなっていくだろう。
今後の動向
大日本印刷株式会社、株式会社エムズコミュニケイトは2011年度中に、雑誌広告効果測定や媒体資料作成のサービス提供を行う予定。今後は、他ジャンルの雑誌も測定対象とし、雑誌媒体価値の向上および雑誌広告の発展に貢献していくとのことだ。