資産は残すより、使うのが大切
「富裕層は子どもにお金を残すことを重要視していない」こんな調査結果を4月19日、米銀行、バンク・オブ・アメリカの資産管理部門、USトラストが発表した。
300万ドル以上の資産を持つ個人、457人を対象に行われた調査では、「子孫に相続することが非常に大切」と答えた人は49%にとどまった。
USトラストのキース・バンクス社長は、調査結果について「多くのベビーブーマー世代の考え方を反映している」と指摘しており、一番関心があるのは、苦労して得た富を使って、長い余生を楽しむことだろう、と語っている。
資産について子どもに教えない
回答者のうち67%が資産の全容を子供たちには明かしていない。また15%は家族の資産について、いっさい教えていないという。
回答者の約半数が遺産について遺言などを作成しておらず、相続について消極的な姿がうかがえる。
教えないのは富裕層の文化?
バンクス社長は、資産の全容を教えない理由について、「資産内容を完全に把握することで、子供たちが勤労意欲を失うのでは、と心配しているため」と分析している。
アメリカ富裕層研究の第一人者トマス・J・スタンリー氏も、著書「The Millionaire Next door」の中で、多くの富裕層は子供たちに両親がお金持ちであることを教えない、と語っている。資産1000万ドル以上の富裕層に1万人にアンケート調査を行い、その生活習慣などを分析した書籍として1996年に刊行されたものだ。
資産をについて知らせないことで勤労意欲をうながす「文化」は、アメリカ富裕層にとって一般的なものと見られる。
調査対象者の平均年齢は61歳だという。彼らの子供たちは、大半がこれから職業的なキャリアを積んでいく年代だろう。300万ドル以上ある資産のことを知れば、苦労に立ち向かう意欲が削がれるのでは、という心配も、自然なことと言える。
著:ハッピーライフエンド編集長 谷垣吉彦
◆バンク・オブ・アメリカ wiki