北海道大学(以下、北大)は5月9日、 食事をとる時刻と睡眠覚醒リズムの関係について、時間隔離による“ヒト”での検証実験を実施し、“ヒト”においても、食事時刻と睡眠覚醒リズムが同調するということを世界ではじめて証明したと発表した。
この研究成果は、北大大学院教育学研究院の山仲勇二郎准教授、同・本間研一名誉教授らの研究チームによるもので、「American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology」誌に掲載され、2022年4月26日(火)に公開された。
食事時刻と睡眠覚醒リズムの関係性を“ヒト”でも証明
山仲准教授らの研究チームは、若い成人男性を対象に、15日間、時間隔離実験室で睡眠に関する行動データを提供してもらう実証実験を行った。
時間隔離実験室とは、外部の昼夜変化や温度、騒音といった時刻についての情報を完全にシャットアウトした1DKの実験用居室のこと。被験者は一歩も外に出ることなく、何週間も生活できるという。
今回、被験者は、食事を決められた時刻にとるグループ(制限食事条件)と、自己の好きな時間にとるグループ(自由食事条件)に分けられ、睡眠覚醒リズム、深部体温やメラトニンの一日の変位、およびエネルギー代謝に関わるホルモン量の変化などのデータを提供した。
各データを分析した結果、自己の好きな時間に食事をとっていたグループでは、睡眠覚醒リズムが乱れてしまったのに対し、食事を決められた時刻にとっていたグループの睡眠覚醒リズムは、ほとんど乱れなかった。
また、深部体温やメラトニンの一日の変位、エネルギー代謝に関わるホルモンに関しては、両グループでの差異はみとめらなかったという。
このことから、准教授らは、「定刻に食事をとることは、睡眠覚醒リズムと同調するが、深部体温やエネルギー代謝に関わるホルモンとは同調しない」ということを“ヒト”において証明できたと報告した。
睡眠障害などの予防策として応用も
食事の時刻と睡眠に関する研究は、マウスやラットなどの夜行性げっ歯類を対象としたものが多く、“ヒト”での検証実験はこれまで報告が無かった。
マウスやラットの1回あたりの睡眠時間は長くて十数分といわれており、“ヒト”と比べてかなり短い。
また、マウスやラットの場合、エサを与える時刻や回数を制限すると、食事時刻の数時間前から活動量や体温、副腎皮質ホルモン濃度が上昇するなど、予知行動が観察されるという。この余地行動は、生体時計中枢とは別の脳部位のはたらきによるものであると推測されている。
そのため、この研究は、“ヒト”の睡眠覚醒リズムと食事スケジュールとの関係を解明することに寄与するものであり、生体リズムの乱れが原因となる睡眠障害などを予防するための行動指針を考える上で役立つと期待されている。
(画像はプレスリリースより)
北海道大学 プレスリリース
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