ヒトTFAMによるミトコンドリアDNAの安定がアルツハイマー病の抑制に
平成28年11月30日、ミトコンドリアDNAの安定性がアルツハイマー病の抑制に繋がること、またそのミトコンドリアDNAの保護においてヒトTFAMが有効であることが、研究により明らかになったと九州大学が発表しました
なお当該研究に当たったのは、同大学の岡素雅子博士と中別府雄作教授及び、医学研究員康東天教授と井手友美講師らにより構成された研究グループです。また、当該研究結果は同年11月29日のイギリス科学誌Scientific Reportsにより、公開されました。
ミトコンドリアDNAが安定することで脳内の悪循環を断ち切ることに
現在、アルツハイマーにおける根治的な療法は解明されておらず、そのことから主な対処法として進行の遅延もしくは予防に焦点が置かれています。
そして今回、当該研究グループによる認知症発症モデルマウスを用いた研究によって、アルツハイマー病の抑制に繋がる2つの事実が明らかとなりました。
まず1つは、アルツハイマー病の抑制にミトコンドリアDNAの安定性が関わっていると言うことです。具体的には、ミトコンドリアDNAを安定させることでアミロイドβの蓄積抑制、それとともに神経突起の伸長が確認されました。また、脳内での活性酸素の生成も抑えられるため、結果的にミトコンドリアの機能も改善されたのです。
そして、アミロイドβ蓄積を抑えるトランスサイレチンが向上することが明らかとなりました。
ヒトTFAMがミトコンドリアDNAを保護
次に明らかとなったのは、こうしたミトコンドリアDNAの保護に当たりヒトTFAMが重要な働きを持つという点です。アルツハイマー病を発症するよう操作されたモデルマウスにおいて、マウスが高齢化した後もヒトTFAM発現群にて脳内でのアミロイドβ蓄積が、減少したことが確認されました。
これは、ヒトTFAMによりミトコンドリアDNAの酸化が抑えられたことによります。
つまり、ヒトTFAMでミトコンドリアDNAの酸化が抑制され蓄積アミロイドβが減少し、ミトコンドリアDNAが安定することで、アルツハイマー病を引き起こす蓄積アミロイドβが減り、神経突起が伸長する等といった連鎖反応が起きるのです。
言い換えればこれは、アルツハイマー病を引き起こす負の連鎖を断ち切ることに繋がり、今後の治療法開発に貢献し得ます。
ヒトTFAMがアルツハイマー病の原因を抑制することを発見~アルツハイマー病の新たな治療法の開発に期待~
http://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/66