スタチンの作用
慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センターの研究グループは、高脂血症の治療薬スタチンに急性腎障害を軽減する働きがあるとして、そのメカニズムを解明したことを2015年10月16日に発表した。
スタチンにコレステロールを低下させる以外の薬理作用があることは、近年、知られるようになり、「スタチンの多面的作用(pleiotropic effects)」と名づけられている。
このスタチンの多面的作用には心血管病の発症を抑制する効果があり、KLF4の作用に酷似している。KLF4(転写因子Kruppel-like factor 4)は細胞の分化や癌の増殖に関わり、血管内皮細胞内では血管傷害となった動脈の肥厚や増殖を抑制する働きもする。さらにiPS細胞を作製する4因子の1つでもある。
有効な治療薬がない
急性腎障害は敗血症や心血管手術後に合併症として発症し、腎臓の血管内皮細胞や尿細管細胞、炎症に関わる好中球やリンパ球、マクロファージとの関連性が明らかになっている。
その一方で、集中治療室の患者の10%以上に確認され、生存率は約50%とされているが、有効な治療薬はまだ開発されていない。
今回、研究チームは、KLF4が急性腎障害を抑制する作用があると仮説を立て、マウスモデルでその働きを立証することに成功した。
今後は、ヒトでの有効性を検証することと、KLF4を標的にした急性腎障害の治療薬につながることが期待される。
(画像はプレスリリースより)
慶應義塾大学 プレスリリース
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