先端医療振興財団の研究グループ
先端医療振興財団客員上席研究員で京都大学大学院医学研究科特定准教授である星美奈子氏らの研究グループは、7月28日、アルツハイマー病の脳で起こる神経細胞死について新たなターゲット分子を発見したことを発表した。
この研究成果は、米国科学アカデミー紀要「PNAS」の電子版に掲載され、7月31日(金)午前11時より先端医療センター臨床棟研修室において、記者会見がおこなわれた。
アミロイドベータ・オリゴマー
アルツハイマー病では、脳の機能を司る神経細胞のシナプスに異常が起こり、神経細胞自体が失われることにより、脳の高次機能が低下する。
最近では、アミロイドベータと呼ばれるタンパク質が凝集してできる「アミロイドベータ・オリゴマー」という集合体が神経細胞死の原因となると考えられているが、その実体と分子メカニズムは解明されていなかった。
「ASPD」
研究グループは、アミロイドベータが約30個集まって直径10~15nmサイズの球状構造を取ると強い神経毒性を持つことを発見し、「アミロスフェロイド(ASPD)」と命名。「ASPD」を選択的に認識する抗体を作製し、アルツハイマー病患者の脳内から「ASPD」を単離する方法を確立した。
また、神経細胞死における「ASPD」のターゲットが、脳内で重要な役割を果たしているシナプスタンパク質であることを初めて確認。「ASPD」は患者脳内に蓄積する「アミロイドベータ・オリゴマー」の約6割を占める主要な成分であり、患者脳内の「ASPD」存在量は、アルツハイマー病の重症度と相関関係にあることがわかった。
今後への期待
今回はさらに、同研究グループは、「ASPD」に結合する4アミノ酸のペプチドが、神経細胞死を抑制することを発見。これにより、アルツハイマー病で起こる神経細胞死に対する新たな治療薬開発が示唆されることとなった。
今後は、「ASPD」がどのように脳内で作られ、いつ形成されるのかを明らかにしていく。臨床応用についても、今後の研究開発における治療薬・治療法開発の新たな進展が期待されている。
(画像はプレスリリースより)
先端医療振興財団 プレスリリース
http://www.ibri-kobe.org/pressrelease/pdf/