電気料金値上げの根拠は賃上げ
東京電力が2013年度から、従業員一人あたり平均46万円の年俸増を行う。家庭向け電気料金を値上げする根拠となる算定基準にも、この年収アップが含まれており、事実上国有化された中での経営方針に、批判の声が高まっている。
大企業平均より高い年俸
福島第一原発事故以前、東京電力社員の年俸は、700万円前後であった。事故後、賠償金の手当などに追われる中、社員の報酬を大幅にカット。その幅は20%~25%におよび、今年度の年俸は525万円に下落した。
だがこの「反省姿勢」は一時のものにとどめるつもりらしい。2013年度には、今年度に比べ、平均46万円のアップの571万円にする予定。
日本の大企業(従業員1,000人以上)では、平均年俸は543万円となっている。原発事故の被害が全く収束しない中、家庭や企業に料金値上げの負担を求めながら、社員の給与は増額するつもりらしい。
事実上国有化されたはずが
東京電力については、今月に入って、国が事実上の経営権を握ることとなった。賃上げは民主党政権が認定しなければ、実現しないはずだ。
民主党はその成り立ちから、労働組合を大きな票田とする。東京電力の労働組合も有力な支持団体であり、その意向には逆らいにくい。
29日には愛知県犬山市で行われた中部電力労働組合の大会で、来賓として招かれていた東京電力労働組合の新井行夫・中央執行委員長が「裏切った民主党議員には、報いをこうむってもらう」と発言。民主党に対する影響力を露呈した。
次回の総選挙では民主党の大苦戦が予想される。労働組合から「報復」された議員の当選は、非常に難しいものになるだろう。
国有化で政府は東京電力に首輪をつけたつもりかもしれないが、実際に首根っこをつかんでいるのは東京電力らしい。今回の賃上げ計画から、そんな相関関係が読み取れる。
◆東京電力
http://www.tepco.co.jp/index-j.html◆朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/national/update/0531/TKY201205310227.html