学生が小学生にいいがかり
「小学生に喧嘩をうってみた」と題された動画が、ネット上で物議を醸している。今月15日、YouTubeに投稿されたもの。小学校低学年と思われる子どもに制服姿の学生がいいがかりをつけ、子どもが泣き出すまでの様子を撮影した動画だ。ネット上では、この「犯人」捜しが進んでおり、すでにさまざまな情報が特定されている。
ajari 非道な動画に怒りの声が殺到
問題の動画は次のようなものだ。1人で下校する途中と思われる小学校低学年の男児に、制服姿の男子学生が背後から近づく。学生はわざと小学生にからだを当て、その後「いてえんだよ!」などといいがかりをつける。
小学生は当初無言で戸惑っている様子だが、その後、いいがかりが激化すると、泣き出してしまう。学生は笑いながら、撮影者に向き直る。
わざとぶつかっておいて、ある程度おどし文句のような言葉を並べる程度であれば、ギリギリ「子どものいたずら」と認識できるかもしれない。
ただ、その場合でも相手の子どもが泣き出してしまえば、謝罪するなり、「そんなつもりではなかった」ことを伝えて安心させようとするなり、というフォローは人として自然に現れるべき心根だろう。
そういった配慮がないだけでなく、YouTubeに投稿したことからは「面白いことをした」という認識が感じられる。
動画を見たほとんどの人が、怒りを表明しており、特に同世代の子どもを持つ親の中には、厳しい処罰を求める声が高いのも当然といえる。
ほぼ特定された「犯行現場」「自宅」「学校」
撮影された風景などから、現場は神奈川県相模原市の串川近辺とみられる。学生の持つかばんが近隣にある片倉高校の制かばんと特徴が一致したため、同校の学生では、との情報が流れたが、ネットユーザーからの問い合わせに学校側がこれを否定。
現在は串川中学校の生徒である可能性が濃厚とみられている。同中学校にも問い合わせが殺到する中、対応は市の教育委員会が担当する模様。串川中学校では、23日午後7時から緊急の保護者会を開くことになっている。
また、外見などの特徴が一致するその他の動画が特定されたことから、「自宅」の住所などもすでにネット上で公開されており、一種の私刑状態が激化している。
高くつく「いたずら」の代償
近年、自分がおこなったこういった違法行為を動画投稿サイトに投稿するケースが多くみられる。今回のケースでも同様の「いたずら」は昔から存在したが、動画を公開しようとする意識は、近年になって発生したものだ。
未熟さゆえの愚かな行為である。数年後に本人が当該動画を見たとしたら、強い自己嫌悪や恥ずかしさを感じるかもしれない。また、学校側などが事実を確定した場合には、なんらかの処分もあるだろう。
ただ、代償はそういった心理的なものや一時的なものにとどまらない。今回のケースでも、名前や顔写真などの情報は、ネット上のどこかに必ず残存し続ける。
就職活動にいそしむ年代になっても、本人の名前で検索をかければ、事件のあらましと顔写真がヒットする可能性は高い。恋愛や結婚といったプライベートな喜びについても、大きな障害となるケースが考えられる。
かつて日本人の倫理観を保つ戒めとなったのは社会が小さいがゆえの「恥」を知る感覚だった。現代はこの役割をネットが務めている、といえるかもしれない。行為の是非、私刑の是非はさておき、そういった社会に生きている認識を大人も子どもも共有する必要がある。
◆シネマトゥデイ
http://www.cinematoday.jp/page/N0042290