模索される新しい可能性
5日深夜、日本最後の原子炉が停止した。再開を巡る動きが活発化する中、再生可能エネルギーへの注目もかつてないほど高まっている。コストを抑え電力を安定供給できる風力発電もその一つ。米国ではウイルスを利用した発電技術がこのほど発表された。
ドアの開け閉め、ウォーキングでも発電
ウイルス発電を発明したのは米ローレンス・バークレー国立研究所。遺伝子操作したウイルスを切手代のシートに仕込み、圧力をかけると発電する仕組み。
ドアの開け閉めやウォーキングなど、日常の動作で発生する「圧力」を電気に換えることができる。
実験では、最大6nA、400mVの電気を発生させることに成功しており、この電力で小型ディスプレイを稼働させることができた。
圧力発電自体はこれまでにも開発されているが、今回の発明ではウイルスを用いていることから、容易に発電体を大量生産することが可能という。
巨大な可能性を秘める風力発電
日本で現在、再生可能エネルギーというと真っ先に語られるのが太陽光発電だが、世界的には風力発電の可能性がより高く評価されている。
国際エネルギー機関が発表した「Clean Energy Progress Report」2011年版では、2020年の発電量について太陽光発電126GW、風力発電575KWと予想する。
原子力発電は福島下第1原発事故を想定しない推計で512KWにとどまっており、2020年には風力発電が上回る、と予想されている。
風車を風船につけて上空の風を利用
海岸線が多く山が多い日本では、ほとんどの地域で1年中風が吹いている。ただ、それでも発電量は不安定であり、風力発電設備の設置には、騒音などの問題も指摘される。
こういった弱点を克服するのが風船による風力発電だ。ヘリウムガスで発電タービンを上空に浮かせてしまおう、というものだ。
いわば巨大なアドバルーンに発電設備を載せ、送電線によって地上に電気を送る仕組みである。
いくつかの試みがあるが、今月、米Altaeros Energies社が発表した「Airborne Wind Turbine」は、ドーナツ型の風船中央部にタービンを設置したスタイル。
実験では上空100mの高さに浮かせて発電し、回収することに成功している。発電量は一般的な風力発電の2倍にあたる。
上空に浮かせるため、騒音などの弊害が少なく、ワイヤーを巻き取るだけで地上に降ろせることから、メンテナンスも容易だ。
日本ではジェット気流利用も
日本では東京農工大学の長坂研准教授らのグループが、同じく風船を利用した風力発電を開発している。
こちらは上空300m~1,000mに浮かべ、ジェット気流を利用するもの。ジェット気流利用により、50m/秒の強風を安定的に利用できるという.
高速増殖炉もんじゅは、これまで2兆4,000億円を費やし、発電もなにもおこなっていない現在も、管理に1日5,500万円を要している。
この数%の予算でも、新しい発電技術を開発することは可能と思われる。血税の使い道としてなにが適正か、可能性とリスク、コストパフォーマンスを見据えた真剣な議論が必要だ。
◆Airborne wind turbine wiki
http://en.wikipedia.org/wiki/Airborne_wind_turbine