図書館業務TSUTAYA委託はNG?
佐賀県武雄市の樋渡市長がTwitter上で怪気炎を上げている。TSUTAYAなどを有する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」(CCC)に図書館業務を委託する計画を発表したことが発端だ。
いいことずくめの計画に見えるが
樋渡市長の計画は図書館の利便性向上と運営費の削減を狙ったものだ。年中無休の開館や雑誌文具などの販売、カフェの設置などにより、現在より使い勝手のいい図書館を実現したいもくろみがある。
民間委託でサービス内容が向上し、コストが削減できる例は多いが、図書館もその例に漏れない。
貸し出しにTポイントカードを利用することで、新規にシステムを構築するコストを抑制でき、利用者は本を借りるだけでTポイントまで得られる。まさにいいことずくめの計画に思える。
にもかかわらず全国の図書館関係者で組織する日本図書館協会や図書館問題研究会は、この計画に反対の意向を表明。阻止運動を予定している。
反対者とのTwitterバトル
図書館関係者が反対する理由は、図書館の基本原則を定めた「図書館の自由に関する宣言」にもとづく。この中では、貸し出し履歴など「利用者の秘密」を守ることが強く義務づけられている。
Tポイントカードを利用することで、貸し出し情報は記録され、蓄積される。情報の内容は年齢や性別程度にとどまり、個人を特定しないというが、厳守されるかどうかについては疑問点が多い。
同計画を発表した記者会見では、高木浩光氏(産業技術総合研究所情報セキュリティ研究センター主任研究員)がこの点を追求した。その後、同氏との議論はTwitter上に移動し、子どもじみた応酬がなされている。
受託はTSUTAYAの陰謀か
佐賀県武雄市は人口5万人あまりの小さな地方都市だ。TSUTAYAがここで図書館事業の受託を始める理由は、全国展開への足がかりにしたいためだろう。
受託における一時的な利益は市からもたらされる委託料だが、これに雑誌や文具の販売、カフェの売り上げが加わるとしても、図書館への来館者数を考えれば、規模の小さなビジネスだ。
隠れた最大のメリットとして、個人情報の取得を狙っている、と見るのは自然だろう。Tポイントカードの利用規約には、購入履歴を他の事業者にも提供することが記されている。
解決策はデメリットの公開
樋渡市長は貸し出し履歴について、下記のようにコメントしている。
「これね、今までね、これ個人情報だって名の下にね、全部廃棄してたんですよ。なんで本をね、借りるのが個人情報なのか、って僕なんか思います」
貸し出し情報が個人情報として重要視される根底には、国家に対する一定の疑念がある。個人の嗜好や思想信条といった情報を国家が悪用するのでは、との疑念を意識すれば、情報を蓄積、利用されることには、薄気味の悪さが感じられる。
ただ、そういったデメリット以上にメリットの方が大きい、と感じる人も多いだろう。今回の問題を解決するには、デメリットをきちんと説明して、市民が従来の図書カードを利用するか、Tポイントカードを利用するか、選択できるようにすればよい。
おそらくポイントがもらえるTポイントカードを選ぶ人が大半になると思われるが、それは市民の選択であり、誰かが文句をつける筋合いではない。
◆武雄市長物語
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