TPP交渉への影響は必至
米農務省は24日、カリフォルニア州でBSE(牛海綿状脳症)に感染した乳牛が確認されたと発表した。韓国では米産牛肉の輸入禁止を求めるデモを呼びかける動きもあるが、日本政府には例によって、適切な対応をとる気配がみられない。
韓国では輸入反対運動も
感染が確認されたのは、乳牛1頭。米農務省は「この牛は食用ではなく、牛肉の安全性には影響しない」と発表するなど、火消しに必死だ。
韓国では2008年、やはりBSEの危険性が解消されないままに政府が米産牛肉の輸入解禁を決めたことから、政権を揺るがす「ろうそくデモ」が発生した。
今回も4周年となる5月2日に、やはり「ろうそくデモ」を企画する動きがあり、政府は神経をとがらせる。
一方、日本では昨年12月、米国産牛肉の輸入規制緩和について諮問する委員会を厚生労働省が立ち上げるなど、「緩和」を目指す動きが活発化している。
米国牛のBSEリスクは減少しているか?
世界的にもBSEが確認されるケースは右肩下がりで減少している。1992年には3万7,316頭を数えたが、2011年には21頭にまで激減。安全性確保を目指す各国の取り組みが功を奏しているかに見える。
米でも、今回確認された牛で4例目に過ぎず、2006年以来6年ぶりとなる発見だ。
ただ実際には、日本では実質全頭検査がなされているが、米国では月齢30か月以上で、BSEが疑われる牛(死亡牛・歩行困難牛・疾病牛)のみが検査対象となっている。
つまり食肉として処理された牛は、ほとんど検査されていないことになる。これで安全といえるのか、大いに疑わしい。
本当に危険なのは豚肉
BSEの感染源と考えられている肉骨粉についても、日本やEUではすべての家畜への使用が禁止されているが、米国ではSRM(特定危険部位)を除いて、豚、鶏への利用が可能となっている。
牛のBSEは豚には感染しない、という研究結果に基づく判断だが、1970年代に米で出版された書籍「隠されている狂牛病」には、狂豚病が確認されたという記述がある。
米国では、その他にも野生の鹿にも同様の病気がみられている。羊や人ですでに感染が確認されている疾病だ。豚への感染リスクがない、という結論を出すためには、さらに慎重な研究が求められる。
◆牛海綿状脳症(BSE)対策の再評価について
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/bse_20120223_2.pdf