ブレーキ痕、意識消失なし
12日に京都、祇園で軽自動車が暴走した事件は運転手を含め、8人が死亡する惨事となった。現場にブレーキ痕がないことや、死亡するまで運転手が意識を消失していなかった形跡があることから、警察では殺人の可能性も視野に入れた捜査を開始した。
殺人事件の可能性も
事故を起こした軽自動車は、タクシーに追突した後、停止せずに逃走。赤信号の交差点に進入し、歩行者をはね、停車中の車両に衝突した。
その後、約190北上したところで電柱に激突し、運転していた藍染め会社勤務、藤崎晋吾容疑者(30)が死亡した。
目撃証言などによると、最初に追突事故を起こしたとき、同容疑者が運転する軽自動車は50km以上のスピードを出していたという。
追突事故後、逃走する際にも、「焦った顔をしていた」など、意識の消失はなかったものとみられている。
当時の現場周辺は、人通りが多かったというが、車重が軽く、加速性能にも優れない軽自動車で、7人もの人間に死亡するほどのダメージを与えることは容易ではない。
偶然ではなく、意図的であった可能性も疑われるため、警察では13日、藤崎容疑者の自宅や勤務先を家宅捜索した。
持病はてんかんだけだったのか?
今回の惨事が無差別殺人だったとすると、藤崎容疑者の持病は本当にてんかんだけだったのか、という疑問がある。
てんかんは幻覚や妄想をともなう統合失調症と関係が深く、てんかん患者が統合失調症を併発する率は、一般の10倍近いという研究報告もある。
再燃する運転免許制限
昨年4月、栃木県鹿沼市でてんかん患者の運転する大型クレーン車が小学生の列につっこみ、6人が死亡するいたましい事件が発生している。
遺族などが持病を申告せず運転免許を取得した患者が事故を起こした場合、厳罰に処することなどを要望。
これを受け、日本てんかん協会は、祇園で事故が発生する直前の9日、てんかん患者の運転免許取得を制限しないよう求める要望書を法務大臣、国家公安委員長宛てに提出した。
もともとてんかん患者は運転免許の取得や更新ができないものとされていたが、2002年の法改正により、「発作が再発しない」ことを条件に、免許取得・更新が可能になった。
矛盾する薬の注意書き
栃木県鹿沼市の事件では、運転手がてんかんの薬を飲み忘れたことから、発作が起きている。
ただ、抗てんかん薬の添付文書には、薬を飲んでいるときには車を運転しないよう求める1文がある。
副作用として眠気や注意力の低下などが発生するためだ。薬を飲まなければ発作の危険性が高まり、薬を飲めば、交通事故の危険性が高まるのが、てんかん患者の実情といえる。
日本てんかん協会は「病名による差別」を危惧するが、視力障害を持つ方が運転に不向きなのと同じく、てんかんを患う方は運転に向かない、と考えるのが妥当だ。
◆てんかん wiki
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%93◆日本てんかん協会
http://www.jea-net.jp/