iPS卵子から生まれたマウス
京大の斎藤通紀教授、林克彦准教授率いる研究チームは昨年、iPS細胞から精子を作り、通常の卵子と体外受精させマウスを誕生させることに成功した。そして今回、iPS細胞から卵子を作る同様の実験に成功したのだ。iPS細胞から作製した卵子からマウスを誕生させたのは世界で初めて。
この2つの研究結果から、理論上、iPS細胞から新たな命を生み出すことが可能になった。
今回、研究チームはメスのマウスの細胞からiPS細胞を作り、これを卵巣の一部になる細胞と混ぜて培養し、卵巣に移植した。約一ヶ月後、卵子を取り出し、試験管内で通常の精子と体外受精させ、卵管に戻したところ、約1.8%の確率で子が生まれたという。
この方法で生まれたマウスは孫の代まで発育に異常は見られなかった。この研究結果は、2012年10月5日付けの米科学誌、サイエンス(電子版)に掲載される。
ヒトへの応用は不可能?
iPS細胞から精子や卵子を作り出し、子どもを生み出すことが出来れば、不妊治療は画期的に躍進するだろう。
しかし、斎藤教授は、現時点でヒトに応用することは非常に難しいと話す。これは、ヒトとマウスでは細胞の性質が大きく異なること、また、生命倫理上の問題から、文部科学省は、作製したヒトの生殖細胞を受精することを禁じているためだ。
ただ、今回の研究は不妊症のメカニズム解明に非常に役立つといえる。不妊に悩む人々のため、こういった研究が早期に進むことを願わずにはいられない。
京都大学
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/