AIDという治療方法
『音羽「お受験」殺人』などの作品で知られるノンフィクションライター、歌代幸子氏。その新たな著書が発表された。タイトルは、「精子提供」。非配偶者間人工授精(AID)で生まれた子どもにスポットを当てた作品だ。
画像:
新潮社AIDとは、提供された第3者の精子を妻の子宮内に注入するという方法。不妊の原因が男性の側にある場合に有効な治療方法だ。
日本産科婦人科学会が行った調査によると、2009年にこの治療を受けた患者は806名、生まれた子どもは97人にのぼるという。不妊治療の中では一般的なものと言えるだろう。
不妊治療で授かった子の気持ちと権利
これだけ多くの夫婦がAIDを受け子どもを授かっている中で、父親にとっては「自分の子どもではない」という気持ちがどうしても拭いきれずに子どもに対する態度がよそよそしくなってしまうことも多くあるようだ。また、両親と容姿が全く似ていない、などの理由から、子ども自身が自身の出生について疑問を持ち始めることも多い。
そして事実を知った子どもは、これまでずっと親に騙されてきたのだという思いに捕われ、深い喪失感に襲われることもあるのだという。実際に母親が不妊治療を受けた病院を訪ね、精子の提供者を探す子どももいる。
ある国では、こういった場合、子に“知る権利”があるとして、情報提供を保障する法整備も進んでいるという。しかし日本では、その情報が子に知らされることはない。
不妊治療は、授かって、生んで終わりではない。生んでからが全ての始まりだ。それを十分に理解して治療に臨んで欲しい。
新潮社
http://www.shinchosha.co.jp/book/438803/