常に「反対無視」の先陣を切る
九州電力は3日、玄界原子力発電所がトラブルで停止していた4号機を再稼働させた。
「住人の容認は不要」として周辺住民の反対を押し切り、再稼働に踏み切ったもの。原発の稼働に際し、法的には周辺住民の容認を得る必要はないが、「容認」を稼働の条件とすることは、これまで各電力会社が遵守する慣例だった。
玄海原発がこういった「日本発」のブレイクスルーを行うのはこれで2度目になる。
暴走体質がはらむ危険性
日本の原子力政策は、使用済み核燃料の再利用を基本とする。プルトニウムなどを取り出して、エネルギー源として利用するもの。たび重なる事故により、現在停止中の「もんじゅ」などの高速増殖炉がプルトニウムの利用施設にあたる。
ところが高速増殖炉計画は停滞。行き先のなくなったプルトニウムを消費するため、ウランと混合して既存の原子炉で使用する「プルサーマル計画」が採用される。
プルサーマルは管理運用が難しく危険性が高いため、地元自治体の反対により実施できる原発がない中、09年12月、日本で最初に営業運転を開始したのが玄海原発だった。
事故を起こした福島第一原発でも3号機はプルサーマル運転を行っており、プルトニウムによる汚染を増大させた。
プルトニウムは内部被爆のリスクが桁違いに大きく、1gで50万人に肺がんを発症させると言われる。
爆発の危険を指摘されながらも運転
こういった暴走体質に加え、玄海原発には機械的なリスクも指摘されている。1号機の圧力容器に想定以上の劣化が予測される中、運転を続けているためだ。
原子炉圧力容器は鋼鉄でできている。鋼鉄は一定温度(脆性遷移温度)以下になると粘りけを失い脆くなる性質がある。中性子線を浴びることで経年劣化が進行、この脆性遷移温度は高くなる。
これが高くなると、冷却水が注入された際などに圧力容器が破損することが考えられる。
原子炉では、圧力容器と同じ素材の試験片を炉内に配置し、定期的にテストすることで、脆性遷移温度を把握している。
運転開始からすでに36年が経過した玄海原発1号機では、2009年に行われた試験片の検査で、予想以上の劣化が判明。老朽化した炉の検査を求める声が高まっているが、佐賀県の古川知事は今年8月上旬、専門家会議の設置先送りを決めた。
九州電力のやらせメール事件に古川知事が関与していた、という第三者委員会の報告を受け、知事の中立性を疑問視する声が上がったためだ。
ただ、その間も問題の1号機は爆発のリスクを抱えたまま運転されている。
◆玄海原子力発電所の運転状況等について
(平成23年度第1四半期)
http://www.kyuden.co.jp/library/pdf/nuclear/news/genkai_h110811.pdf◆九州電力 玄海原子力発電所
http://www.kyuden.co.jp/genkai_index.html