学生は6割が患者からの暴力を経験
筑波大学大学院人間総合科学研究科、看護科学科、村井文江、三木明子、江守陽子教授が2009年に「臨地実習で看護学生が体験した患者からの暴力とそれに対する学生の認識」の調査結果を発表した。(日本看護学教育学会誌 19(1), 45-59, 2009-07-01)
これによると、看護学生で患者から何らかの形で暴力を受けた人は、6割にのぼるという。この結果は、就労している看護師の2倍にあたる。
調査は、2007年に行われており、関東圏の看護専門学校、短大、大学15校で、看護学712人を対象。有効回答率は83.3%であった。
このうち、暴力を受けたと答えた学生は59.4%で、暴力の件数は1498件。精神的暴力は44.7%、性的暴力は43.1%、身体的暴力は12.2%の内訳となっている。
2割は誰にも相談できず
具体的に「最も困った事例について」受けた暴力の内容を記述した95人のうち、約20人は、誰にも相談していなかったことが明らかになった。暴力を受けた経験は、学生のうちに怒りや嫌悪感といった否定的な感情を呼び起こした。
研究チームでは、患者が抱える不満やストレスが、経験が浅い学生へとはけ口を求めた結果であると分析している。学生に対しては、予防策として、患者との距離の置き方などの指導を行うことや、防犯ブザーなどを持たせるなどの配慮、万が一防止できなかった場合のプロセスとして必要時の第3者への届出や相談など暴力への対処法を教育する必要があるとしている。、
同研究チームでは2008年にも「実習場で看護学生が受ける患者暴力を防止するための教育方法の開発」(日本看護学教育学会誌 19(3), 85-86, 2010-03-01)を発表しており、看護学生と患者からの暴力の相関性に以前より着目し、積極的に取り組んでいる。
筑波大学大学院人間総合科学研究科、看護科学科
http://www.md.tsukuba.ac.jp/kango-kagaku/weblog/index.php日本看護学教育学界
http://www.jane-ns.org/