陸上植物の共通遺伝子が初めて明らかに
大学共同利用機関である基礎生物学研究所と金沢大学学際科学実験センターらは、国内5大学および国外9ヵ国による国際共同研究チームと共同で、シダ植物のゲノム解読に世界で初めて成功した。
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jetalone陸上に上がった緑色植物の一群である陸上植物の中で、最も複雑な形を持った被子植物と最も単純な形を持ったコケ植物のゲノムは既に解読されていた。
ところが、これらの中間に位置するシダ植物は、ゲノムの大きさが大きく、ゲノム解読が難しかった。このため、どのような遺伝子のどのような進化によって陸上植物が進化してきたのか長い間謎であったという。
今回、基礎生物学研究所らは、ゲノムの大きさが極めて小さいイヌカタヒバを用いることで、シダ植物のゲノム解読に初めて成功した。そして、シダ植物とコケ植物、被子植物のゲノムを比較解析した結果、陸上植物が共通に持つ遺伝子の存在を明らかにした。
作物の品種改良に役立てる
シダ植物、コケ植物は、作物などの被子植物の持っていない有用な性質を持っている。例えば、乾燥耐性能力や再生能力、耐病害虫性は、被子植物よりもずっと優れている。
今回の研究により、シダ植物、コケ植物及び被子植物の遺伝子のリストがそろったことから、今後、これらの性質の働きを司る遺伝子を解析することが容易になる。将来的には、作物に有用な性質を付与し品種改良することに役立つと基礎生物学研究所らは期待する。
本研究成果は、2011年5月5日(米国東部時間)に米国科学雑誌「Science」のオンライン速報版で公開され、同誌の2011年5月6日号に掲載された。
シダゲノムの解読(JSTの発表資料)Science「The Selaginella Genome Identifies Genetic Changes Associated with the Evolution of Vascular Plants」