7割の病院で看護師不足
日本はいま本格的な高齢化社会を迎える中、看護師や助産師など、毎年新たに5万人の看護職の資格取得者がいるにもかかわらず、離職者が10万人もいて、看護師不足が深刻な問題となっている。
昨年の厚生労働省の調査では、約7割の病院が看護師不足と回答するなど、全国的に看護師が足りず、医療機関が看護師人員確保に懸命になっているという。
<イメージ画像 ナースコール>
仕事量の増加と複雑さから多忙な看護師!
医療の高度化・専門化している中、一方では収益増加のためにベッドの稼働率を上げる経営方針の医療機関が増えており、看護師は仕事量の増加と複雑さから多忙を余儀なくされ、看護師資格を得て就職しても退職する看護師が増えているというのだ。
待遇問題もある。看護師の給与は、年齢を重ねてもあまり上がらない仕組みになっていて、09年の人事院の調査では、看護師の平均月給は夜勤手当も含め、20代では約30万円と薬剤師や臨床検査技師など他の医療職より高いが、30代以降は徐々に抜かれ、56歳以上でも40万円には満たないという。
夜勤・時間外労働など労働環境も厳しく
また、看護師の労働環境は依然として厳しく、夜勤の回数が多いことから子育てなどとの両立は困難で、結婚や出産を機に辞める人も多いという。夜勤免除制度があっても、同僚に迷惑がかかるとの意識から使えないというのだ。
日本看護協会は09年に交替勤務制で夜勤をしている看護師の23人に1人が、過労死レベルの月60時間以上の時間外勤務をしているとの推計を発表している。年齢が若いほど時間外勤務は長くなり、20代の時間外勤務は平均25.9時間で、さらに20代の4人のうち3人は35時間を超える時間外勤務をしていたとのこと。
こうしたことから同協会は、厚労省に対しこの7月、「看護職の労働時間などの適正化に関して」と題した要望書を提出してもいる。
看護師の成り手が減るなら、働き続けられる環境作りを
しかし実態として、少子化で看護師の成り手は減少傾向にある。厚労省の検討会の推計では、看護職員の実働人員の年間増加数は、25年には09年より約1万2000人も少ない約2万4000人になると予想されている。
同協会の小川常任理事は、
「看護師を増やした病院は増収となるよう診療報酬を改定し、夜勤手当の増額を連動して実施するなど、国と病院管理者が連携して離職防止策を進めるべき。看護師ら医療現場のスタッフが安心して働ける環境づくりこそが、患者の安全を守ることにつながる」
と訴えている。
厚労省労働基準局に要望書
http://www.nurse.or.jp/home/opinion/newsrelease/2010pdf/20100716.pdf日本看護協会
http://www.nurse.or.jp/