採れたてプリプリ!旨み抜群の海のミルク
その旨みあふれる深い味わいと豊富な栄養素から「海のミルク」とも称される牡蠣は、数ある魚介類の中でもファンの多いものですね。牡蠣の季節と聞くと、食べたくてうずうずしてしまうという方も少なくないのではないでしょうか。今回は、そんな牡蠣について少しご紹介します。
“牡蠣の季節”として、俗に「Rのつかない月」は食べるなといったこともいわれますが、旬はいつなのでしょう。知っているようで知らない、いまいちつかめないと感じていませんか。実は、日本で食される牡蠣には、大きく2つの種類があるのです。1つは真牡蠣、もう1つは岩牡蠣です。
真牡蠣は、一般的にイメージされる冬の代表的食材としての牡蠣にあたり、10月上旬頃から市場に出回り始め3月頃まで、南の福岡などでは5月頃まで出荷されます。秋冬に栄養を蓄え、初夏に一気に産卵期を迎えるため、春~夏には卵が入っていたり、産卵直後で栄養が抜け味が落ちていたりすることから、冬場や初春に旬となり、水っぽさのない濃厚な味わいをたたえるものとなるのです。
真牡蠣は生食のほか、殻付のまま網焼きにしたり、蒸し牡蠣や鍋、フライにしたりと、さまざまな調理法で楽しめます。
一方、岩牡蠣は真牡蠣同様、夏場に産卵するものの少しずつ複数回に分けて産卵するため、栄養が抜けているということがないほか、生殖腺自体が独自の美味しさをもつという特性があることから、生殖腺に十分な栄養がため込まれた夏が最も美味な時期、旬であるとされています。
岩牡蠣は、真牡蠣に比べ一般市場・店頭に出回りにくく、産地に出向いて食べるケースが中心です。現地で採れたてを刺身などにしていただくと最上ですね。
自分好みを見つけたい!各地のブランド牡蠣
さてこうした牡蠣ですが、近年は全国で数々のブランド牡蠣が登場しているのをご存じでしょうか。主要産地として知られる広島や三陸だけでなく、さまざまな地域にそれぞれ特色をもったブランド牡蠣が誕生してきています。急増するブランド牡蠣の中から、注目のものを一部ご紹介しましょう。
まず北海道からは「カキえもん」ですね。厚岸生まれの牡蠣で国内唯一、年中出荷されています。低い海水温の中、ゆっくりじっくり育つことで、豊富な栄養を取り込み、ふっくら大きく、コクと濃厚な甘みをもった牡蠣になっています。食べ応えのある大きさと臭みのなさで、誰にも愛される美味しさが特徴、蒸し牡蠣で食べるのがとくにおすすめです。
同じく北海道厚岸には「マルえもん」というブランド牡蠣もあります。こちらは宮城の種を用いたもので、飲食店からの引き合いが多く、ころっとした丸みがあり、貝柱からわたまでバランスのとれた味わいが楽しめます。
岩手県には“幻の牡蠣”と称される逸品「赤崎冬香」があります。耳釣り養殖と呼ばれる独自の方法で、3年かけて育てられるこの牡蠣は、成熟した深い味わいと芳醇な風味が特徴、身入りにも優れ、高級料亭での取り扱いも多い人気ブランドとなっています。
「赤崎冬香」と並んで希少性が高いのは三重県志摩市の「的矢かき」でしょう。プランクトンが豊富な漁場環境を活かし、1年で育てあげることで、1年貝特有の渋みが少なく甘みの強い仕上がりを実現しています。紫外線による殺菌設備を世界で初めて開発した養殖場でつくられており、生産量が限られることから、卸値でも1個1,000円といった高額で取り引きされています。
同じ三重県でも鳥羽の離島である答志島の桃取では「桃こまち」という1年貝のブランド牡蠣が育てられています。桃取の速い潮の流れ、豊富な栄養分により、ぷりっとしたハリ感のある身の濃厚でいてみずみずしい味わいが楽しめます。
対照的に三重県浦村湾の「浦村かき」は、とろりとした柔らかな食感、さわやかな味わいで人気があります。乳白色のぷっくりと肥えた身、口いっぱいにとろけてゆく旨みはグルメもうならせるやみつきの味ですね。
かき養殖が盛んな広島では廿日市市の「かき小町」が注目です。こちらは広島県などが品種改良で生み出した産卵をしない種で、産卵に費やされる栄養も身の成長にまわることから、早く育ち通常の3倍程度の大きさになるという特徴があります。
同じ広島県の宮島対岸、地御前海域では「健牡蠣」というブランド牡蠣も生産されています。こちらも大粒で、くっきりとした黒い襞のある殻いっぱいのふっくらとした身、濃厚でミルキーな味わいが特徴ですね。もみじおろしとあさつきにポン酢でいただく「酢がき」がおすすめです。
岡山県には「日生のカキ」と呼ばれる加熱しても身が縮みにくい特徴をもった牡蠣があります。加熱に向くので、かきめしやカキフライ、B級グルメとして人気になった「カキオコ」こと牡蠣入りのお好み焼きでも楽しみたいですね。
南では、九州・熊本県八代市の「鏡オイスター」というブランド牡蠣も有名です。八代海の恵みをたっぷり閉じ込め、大粒に育ったこの牡蠣は、地元で炭火焼きにした焼き牡蠣が人気で話題となりました。食味の濃厚さにも定評があります。
また長崎の九十九島では、夏場と冬場の海水温の温度差が激しい環境を活かし、身の引き締まったコクのある「九十九島かき」が生産されています。やや小粒ながら深い濃厚な味わいを楽しめるでしょう。また同島では岩牡蠣も有名で、冬の真牡蠣である「九十九島かき」とはまた違った、ごつごつとした岩のような外観にたっぷりとした厚み、ずっしり重い殻に、ぽってりと大きな身がいっぱいにつまったジューシーな牡蠣を楽しむこともできます。
いかがでしたか。産地によってさまざまな特徴がありますね。産地を旅して贅沢に牡蠣三昧、近隣をめぐって食べ比べなど、好みの味を探しながら、自然の恵みを存分に楽しんでみてください。
(画像は写真素材 足成より)