患者より樹立したiPS細胞を用いて神経堤細胞を作製
京都府立医科大学大学院医学研究科・森井芙貴子大学院生らの研究グループは、7月21日、シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)の病態に関連する分子変化を、iPS細胞由来神経堤細胞を用いて解明したと発表した。
同研究グループは、CMT患者より樹立したiPS細胞を用いて神経堤細胞を作製し、遺伝子発現解析を実施。同細胞では、活性酸素種の産生が上昇していたという。
現在のところ有効な治療法は存在しない
CMTは、世界中でもっとも頻度の高い遺伝性末梢神経障がい。病理学的には、脱髄型CMTと軸索型CMTに分かれ、現在のところ有効な治療法は存在しない。CMT全体の6割以上を占める脱髄型CMTは、シュワン細胞の変性によって引き起こされ、これまでに数多くの原因遺伝子が報告されている。
同研究では、脱髄型CMT患者よりiPS細胞を作製し、シュワン細胞を作り出す幹細胞である神経堤細胞へ分化。この神経堤細胞を用いて、遺伝子発現解析が実施された。結果、患者のiPS細胞由来神経堤細胞では、グルタチオン転移酵素の一種であるGlutathione S-transferase theta 2の遺伝子発現が上昇。また、活性酸素種の産生も上昇が確認された。
治療法の開発につながることが期待できる
同研究グループは、脱髄型CMTに関与する早期の分子変化の一端を明らかにした今回の成果について、治療法の開発につながることが期待できるものとする。そして、さらなる病気のメカニズムの解明が進むことも期待している。
なおこの研究成果は、日本時間7月12日に国際科学誌『NeuroReport』において公開されている。
(画像はプレスリリースより)
iPS細胞由来神経堤細胞を用いてシャルコー・マリー・トゥース病の病態に関連する分子変化を解明 - 京都大学 iPS細胞研究所
http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/