インスリン分泌の変化が遺伝子発現を制御
東京大学大学院理学系研究科の黒田真也教授らの研究グループは、11月23日、インスリンが遺伝子の発現を制御する仕組みを突き止めたと発表した。
この研究は、同グループおよび同大学院新領域創成科学研究科の鈴木穣教授らが共同で実施したもの。インスリン分泌の時間速化や濃度の変化が、遺伝子発現を制御することがわかったという。
血糖値を下げる役割を持つインスリン
インスリンは、血糖値を下げる役割を持ち、効き目が低下すると肥満や糖尿病を引き起こすことで知られるホルモン。血中のインスリンは、食後の血糖の上昇に反応し、高い濃度で一過的に分泌される。その一方、それ以外では低い濃度が持続的に維持されている。血中インスリン濃度の変化は、波の形として表すことができる。
インスリンは、代謝など多彩な生理現象を制御する。その一部は遺伝子の発現によって制御されていることが知られていたが、インスリン分泌の時間変化や濃度によって遺伝子発現がどのように制御されているのかについては、不明のままだった。
糖尿病などを効果的に治療できる糸口
同研究グループは、インスリン刺激に対して発現が増加あるいは減少するすべての遺伝子について、その発現の時間的な変化を表す波形を抽出。その結果、研究グループはインスリン刺激に対して発現を変化させる278種類の遺伝子を同定した。
同研究グループは、時間速化や濃度を制御する投薬や治療指針を設計することができれば、糖尿病などの疾患を効果的に治療できる糸口となり得るとしている。
(画像はプレスリリースより)
インスリンが遺伝子の発現を制御する仕組み - 東京大学
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