富山大学記憶の関連づけに関わる神経細胞集団が明らかに
2019年1月23日、記憶の関連づけに際しその役割を担う神経細胞集団が明らかになったと、国立大学法人富山大学が発表した。
記憶細胞集団の重なりが記憶を関連づける
人が新たな概念や知識を得るとき、これに関する情報同士を結びつけそれとする。また、個別の記憶についてはそれに対応する神経細胞集団により保持され、それらが関連づけられるときそれぞれの神経細胞群が重なり合うのだ。
だが、こうした神経細胞集団の重なりが何を意味するかまでは明らかとされてはいなかった。
こうした中、富山大学はマウスに対する味覚嫌悪学習及び音恐怖条件付けによって、この神経細胞の重なりについて検証したのである。具体的には、味覚嫌悪学習では塩化リチウムとサッカリン水溶液での「内臓倦怠感」、音恐怖条件付けにおいては電気ショック及びブザー音による、「すくみ反応」の関連学習だ。
そして、これらをそれぞれ別個に学習させた後、サッカリン水溶液とブザー音を連続して提示し、それぞれの嫌悪反応を同時に想起させることで、無関係に学習されたはずのすくみ反応と内臓倦怠感が関連づけられた。
これと同時に、それぞれに対応する扁桃体内の神経細胞集団の重複が増加したのである。
そこで該当する嫌悪記憶を想起したときに、重なり合った神経細胞集団のみ活動抑制を行った結果、味覚嫌悪学習及び音恐怖条件付け同士の関連度が低くなったのだ。更にこのとき、両条件付けそれぞれの記憶は保持されたままであった。
つまり、味覚嫌悪学習及び音恐怖条件付けそれぞれの記憶は保持されたまま、両者の関連づけのみ神経細胞集団の活動抑制により低減されたというわけである。
このことにより、各神経細胞集団同士の重なりは記憶の関連づけにのみ働き、それぞれの保持には関係ないことが明白となったのだ。
PTSD等関連精神疾患の治療法開発に貢献か
加えて、この事実は必要性の低い記憶同士の関連づけの操作可能性を示唆される。
これにより、ある記憶とそれに関連する情動等の結びつきにより引き起こされる、PTSDに代表されるような精神的な疾患治療法の開発に、貢献することが期待できるのだ。
なお、これは当該研究結果発表の解禁日である、同年1月27日にアメリカの科学誌Scienceにて公開された。
(画像は富山大学より)
記憶を関連づける神経細胞集団の仕組みを解明(富山大学大学院医学薬学研究部井ノ口馨教授)
https://www.u-toyama.ac.jp/