マウスの大脳皮質の樹状突起形成の決定因子
理化学研究所脳科学総合研究センター視床発生研究チームは、マウスを使って大脳皮質内で神経細胞の樹状突起の形態形成を決定する分子メカニズムの一端を解明したと、11月1日発表した。
(画像はプレスリリースより)
無駄を捨てて脳内神経回路の混線を防止
神経細胞は、情報を伝達する軸索と、情報を受け取る樹状突起からなり、それぞれが正しく結合して神経回路を形成する。このとき、外部からの情報入力が少ない樹状突起を捨て、残った樹状突起の枝分かれを入力の多い方向に増やすことで、より効率的な神経回路にし、回路内の不要な接続や混線を防止している。このメカニズムは正常な脳機能の維持に非常に重要であるが、どのようなメカニズムで制御されているかはわかっていなかった。
Btbd3が樹状突起の選別に関与
研究チームはマウスのヒゲから入力される感覚情報を処理する大脳皮質の体性感覚野にある「バレル皮質」で、余分な樹状突起を除去し、残った樹状突起の枝分かれを増やす神経細胞に着目。この神経細胞が特異的に発現している遺伝子
Btbd3の機能を阻害したところ、本来非対称になるはずの樹状突起が対象な形状のままであったことから、この遺伝子が樹状突起の除去・枝分かれに重要であることがわかった。さらにフェレットの視覚野で同様の実験を行ったところ、別種の動物でもこのメカニズムが機能していた。
Btbd3が種を超えて樹状突起の制御メカニズムに関わっていることから、今後樹状突起が除去されなかった場合の能の機能障害などが明らかにできる可能性がある。研究グループでは、ヒトの神経回路の混線による精神疾患やそのメカニズムの解明などにもつながると期待している。(長澤 直)

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