「死の医師」は安らかな死を迎えた
米国の病理学者、ジャック・キヴォーキアン氏が6月3日、入院中だったミシガン州の病院で死去した。
多くの末期患者の自殺を幇助したキヴォーキアン氏は、生前「死の医師(ドクター・デス)」と呼ばれた。日本では手塚治虫の人気漫画「ブラック・ジャック」の登場人物、ドクター・キリコにたとえられることもあった。
かねてから腎臓や心臓の疾患で入院していたが、虚血性心疾患で死亡したものとみられている。享年83歳だった。顧問弁護士によると、「苦痛のない安らかな死」を迎えたという。
殺人罪で服役も
キヴォーキアン氏は生前、130人あまりの末期患者に対して、積極的な自殺幇助を行ったことで知られる。このうち1件で殺人罪に問われ、8年間の禁固刑に処された。
それまで氏は自作の自殺幇助器「マーシトロン」によって、自殺を幇助してきた。マーシトロンは末期患者が自らスイッチを押すことで、死を選ぶことが可能な器械。
殺人罪に問われたケースでは、スイッチすら押せないALS(筋萎縮性側索硬化症)患者に対して、より積極的な幇助を行っている。この様子をビデオ録画し、公開したことから起訴されており、確信犯的な行為だった。
2007年に出所するにあたっては、以降安楽死に関わらないことを誓約させられている。
米世論調査企業ギャラップの調べでは、2011年現在も、「倫理的に容認される」とする人が45%なのに対し、「倫理的に正しくない」とする人が48%となっている。
腎臓を振りかざして「早い者勝ち」
氏は奇行でも有名。遺体を病院や、公園、空きビルに置き捨てるなどの奇行は多くの反感を招いた。
自殺幇助ビデオを公開した1998年には、自らの主張を語る記者会見で、安楽死患者の腎臓を振りかざし、「(移植を望むなら)早い者勝ちだ」と語り、物議を呼んだ。
著:ハッピーライフエンド編集長 谷垣吉彦
◆ジャック・キヴォーキアン wiki