産学連携で次世代レーザーディスプレイの実現に
科学技術振興機構(JST)と東京工業大学は12日、自然な色彩を表現するための液晶レーザーの低エネルギー発振に成功したと発表。
産学イノベーション加速事業によるもので、次世代レーザーディスプレイの実現につながるものという。
JST産学連携事業の一環として、東京工業大学 大学院理工学研究科の渡辺順次教授らは、自然な色彩を表現するための
液晶レーザーの開発において、従来の20分の1のエネルギーでのレーザー発振に成功したもの。
液晶レーザー:液晶が作り出すらせん構造を利用するレーザー発振装置
カナブンの鮮やかな金属光沢色は、甲羅を覆っているらせん周期構造(
コレステリック液晶構造)による可視光の選択反射によるもので、このような自然な色彩を忠実に表現できるディスプレイの実現が強く望まれていた。
コレステリック液晶:らせん構造を示す液晶で、最初にコレステロール誘導体から発見された
液晶レーザーディスプレイは優れた色彩表現が
カナブンの甲羅と同じように、可視光の波長と同程度のらせん周期構造のコレステリック液晶に色素を導入し発光させると、光の閉じ込めと増幅が生じレーザー発振するという。
このような液晶レーザーを用いたディスプレイには、従来の液晶ディスプレイと比較し色再現性や視野角特性が良く、優れた色彩を表現できる究極のディスプレイとしての期待がある。
さらに無機物化合物の半導体レーザーとは異なり、加工性、波長可変、超小型化が可能などの優位性があり、フレキシブルな面発光レーザーデバイスを製作できる可能性を持つとする。
効率的にレーザー発振する発光色素を開発、実用化へ
しかし実用化に必要な連続発振のためには、レーザーをできるだけ小さいエネルギーで発振させる低
閾値化という大きな課題があったという。
閾値:レーザー発振に必要なエネルギーの限界値
今回、発光色素の持つ量子収率や蛍光寿命、配向性などの因子と低閾値化の関係を明らかにすることによって効率的にレーザー発振する発光色素を開発し、従来の20分の1の閾値でレーザー発振することに成功したもの。
今後は、液晶レーザーの連続発振、次世代の液晶レーザーディスプレイの実現を目指すとしている。
なお当開発成果は、5月26日から28日までパシフィコ横浜にて開催される「第59回高分子学会年次大会」で発表される予定で、この発表は一般発表約2000件の中から選ばれた注目発表(11件)の1つとのこと。
<産学イノベーション加速事業(S-イノベ)による成果>
研究開発テーマ:
「フォトニクスポリマーによる先進情報通信技術の開発」
研究開発課題名:
「高分子ナノ配向制御による新規デバイス技術の開発」
研究開発期間:平成22年1月~平成31年3月
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