炎症性腸疾患の新たな治療標的となる可能性
富山大学は、7月24日、同学和漢医薬学総合研究所・林周作助教らの研究グループが、腸管マクロファージのIL-10産生に脂質キナーゼPI3K p85αが関与し、炎症性腸疾患の新たな治療標的となる可能性を見出したと発表した。
この成果は、指定難病である炎症性腸疾患に対する新規治療薬開発に期待が持てるものだという。
新たな治療戦略の創出を目指して研究
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)は、厚生労働省より指定難病とされている慢性炎症疾患。治療には、ステロイドに加えて、炎症性サイトカインであるTNF-αに対する抗体医薬などが使用される。しかし、十分な病態改善が得られないことも多く、新規で有用な作用機序を有する治療薬の創出が求められていた。
IBDの病態形成には、腸管局所における腸管粘膜免疫系のバランス異常が関与していると考えられている。同研究グループは、腸管粘膜免疫系での恒常性維持に中心的な役割を担う腸管マクロファージに着目し、新たな治療戦略の創出を目指して研究を行っていた。
炎症性腸疾患モデルマウスの病態を改善
同研究グループは今回、腸管粘膜に存在する腸管マクロファージでは、抗炎症性サイトカインであるIL-10の産生にPI3K p85αが抑制的に関与することを、PI3K p85αを欠損させた遺伝子改変マウスを用いて発見。また、遺伝子改変マウスの腸管マクロファージでは、IL-10の産生が亢進し、炎症性腸疾患モデルマウスの病態が改善されることも明らかにしている。
同研究グループは、PI3K p85α特異的阻害薬のような薬物が今後、IBDに対する新規治療薬となる可能性について、期待しているという。
(画像はプレスリリースより)
腸管マクロファージのIL-10産生に脂質キナーゼPI3K p85αが関与し、炎症性腸疾患の治療標的となる可能性を見出した - 富山大学
https://www.u-toyama.ac.jp/