楽しい記憶の『想起』が、抗うつに効果大
楽しい記憶の想起は、ストレスのプロセスに関与するといわれる、海馬の活性に役立つといわれているが、未だ正確なメカニズムがわかっていない。
理化学研究所・脳科学総合研究センター、利根川進博士らのグループが、今週のNature誌に『楽しいの思い出を想起することは、マウスでうつ様行動を軽減する』という内容の論文を発表した。
博士らは、雄マウスが雌マウスと遊んだ楽しい肯定的な経験を、特定の神経操作によって、光のパルスで再活性化することができるようにしたマウスを作ることから着手。
そしてそのマウスを、うつ行動を誘発するような、ストレスの多い条件に晒し、うつ状態にした後、楽しい記憶を再活性化することで、抑うつ状態の改善を試みる、という実験を行った。
楽しい体験そのものではなく、その想起に効果
つまり、楽しい記憶を人工的に呼び出せる状態にしたマウスを、うつ状態にした後、人工的に楽しい記憶を呼び起こして、現在のうつ状態に対する改善作用をみたものだ。
その実験では、楽しい体験を与えただけでは、うつ行動の改善は見られなかったが、楽しい記憶を想起した後、ストレス誘発のうつ行動に対する回復効果が、持続的に続くことを示したのだという。
つまり、研究は楽しい経験そのものではなく、それを思い出すことに、抗うつ効果を見いだしている。その結果は、治療的意味を有しているといってよいが、ヒトに適合する方法が解明される必要がある。
マウスには、かなり気の毒な実験であったが、もはや世界的な社会問題である、『うつ』の克服に向けて、大きな一歩となる発見だ。
(画像はプレスリリースより)
理化学研究所 プレスリリース
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