脳卒中による運動障害からの回復
独立行政法人理化学研究所と独立行政法人国立循環器病研究センターは、2014年1月9日、脳卒中による運動障害からの脳神経回路の回復メカニズムを解明したことを発表した。
脳卒中とは、急性の脳梗塞や脳内出血などの脳血管障害による疾患のことであり、国内の患者数は120万人を超え、死亡者数は年間13万人以上、死亡原因の3位となっている。言語障害・運動障害・感覚まひなどの神経症状を伴うのが特徴で、発症後の日常生活の自立度合を大きく左右する運動障害は、リハビリテーションによってある程度回復するものの、その詳細な回復メカニズムは分かっていなかった。
(画像はWikiメディアより引用)
3カ月間のリハビリテーションを経時的に観察
理研ライフサイエンス技術基盤研究センター機能構築イメージングユニットの林拓也ユニットリーダーと京都大学医学研究科附属脳機能総合研究センターの武信洋平研究員、国立循環器病研究センター脳神経内科の長束一行部長らによる共同研究グループは、脳卒中患者が発症後3カ月間のリハビリテーションを行う過程の、運動機能と脳内の「神経線維連絡性」を経時的に観察し、最先端画像技術である「拡散テンソルMRI法」を用いて神経線維連絡性の評価を行った。
新しい治療法やリハビリテーション法の最適化に期待
その結果、3カ月かけて運動機能は徐々に回復し、障害がある側の大脳皮質から脊髄へとつながる神経線維連絡路で神経線維の変性が徐々に進むことが確認された。一方、それを補うように脳の中心付近深部にある赤核や脳梁中部において神経線維の再構築が進むことも明らかにされた。これは、赤核における神経線維の再構築が運動機能の回復と関係していることを示唆している。
今回の研究結果により、脳の損傷後のリハビリテーションによって赤核のような「進化的に古い脳部位」が活性化され、運動障害の回復に寄与する可能性が示された。今後は、赤核から脊髄系を含む神経経路の再構築・強化を組み合わせた新しい治療法の開発や、リハビリテーション法そのものの最適化の可能性が期待できる。(鈴木ミホ)

独立行政法人理化学研究所 プレスリリース
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