病原体退治に新発想
標的とした病原体を無毒化するスーパー抗体酵素の開発に、大分大学工学部の宇田泰三教授らが成功した。同物質は、がんやインフルエンザなどの特効薬になる可能性もある。
抗体と酵素のコラボ
スーパー抗体酵素とは、特定のタンパク質に結びつく「抗体」の性質と特定のタンパク質を分解する「酵素」のはたらきをあわせもつ人口の高分子化合物。
狙った病原体だけを破壊し、無毒化できるため、インフルエンザ、HIVなどのウイルス病やがんなどにも効果を持つものとして期待される。
マウスだけじゃない! 人への応用にも成功
これまで、HIVウイルスやピロリ菌、インフルエンザウイルスなどを標的とするスーパー抗体酵素は作られてきた。
ただ、マウスから作られたため、人への投与には、アレルギーなどの危険性が指摘されていた。
今回、宇田教授らのグループは、狂犬病のワクチンを接種した人の血液からスーパー抗体酵素を作った。
これを狂犬病ウイルスとともにマウス10匹に投与したところ、通常全滅する11週を過ぎても、5匹が生存していたという。
ピロリ菌の定着も防ぐ
同グループの実験では、胃潰瘍の原因となるピロリ菌の定着を防ぐことにも成功している。
ピロリ菌が胃壁に定着するには、ウアレーゼという酵素を利用する。これをターゲットとして破壊するスーパー抗体酵素を用いることで、ピロリ菌は排除されるという。

◆「スーパー抗体酵素」(Antigenase)の開発
http://www.ciicz.jp/bio/guidebook/041.pdf