長期逃亡を支えた偽名保険証
オウム真理教元信者で、元幹部平田信容疑者の逃亡を助けたとされる斉藤明美容疑者が、偽名の保険証を基盤に、長期の逃亡生活を送ってきたことが判明した。
就職したら「もらえちゃった」
平田容疑者、斉藤容疑者の逃亡生活は、16年10か月にもおよぶ。この暮らしを支えたのが、偽名の保険証だった。
斉藤容疑者は逃亡はじめて数年後の平成12年ごろ、東大阪市で整体院に就職する。履歴書には「吉川祥子」という偽名を用いた。
整体院を通じて、中小企業の従業員やその家族が加入する「協会けんぽ」への加入を申請。これが受け付けられ、「吉川祥子」名義の保険証が発行された。
接見した滝本太郎弁護士に対して斉藤容疑者は「就職したらもらえちゃった」と話したという。
斉藤容疑者が保険証を取得した当時、保険証の申請に際して、戸籍謄本や住民票による本人確認は必要とされなかった。
全国健康保険協会大阪支部では、確認手順に不備があったことを認めながらも、「元看護師だった斉藤容疑者が制度を熟知していたのでは」との見解を示している。
「犯罪インフラ」がフリーパスで
もともと保険証は紙に印刷されただけ、という体裁のものが多いため、偽造が容易だ。裏社会では数万円程度で提供されているが、使用目的によっては、偽造が露見する危険性がつきまとう。
偽名で正規に取得されたものには、そのリスクがないため、使用できる範囲が広がる。
保険証があることで斉藤容疑者は、病院の受診はもちろん、銀行口座を開設し、携帯を持ち、インターネット契約を結ぶことができた。長期の逃亡は、保険証なしでは不可能だったかもしれない。
他人になりすますことができる偽名の保険証を松原仁国家公安委員長は「犯罪インフラ」と呼ぶ。
警察庁では厚生労働省に対し、この犯罪インフラが容易に作られないよう、対策を求める方針だ。
◆msn
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120130/crm12013021270020-n1.htm