古典的な文化と現代的な文化がミックスすると、予期しないことが起きるものである。まさかクラシック音楽の演奏中にスマートフォンが鳴るとは・・・。
演奏が中断
事件が起きたのは、世界でもっとも有名なオーケストラの1つ、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の演奏中だ。
その夜、ニューヨーク・フィルハーモニーが演奏していたのは、グスタフ・マーラーの交響楽第9番。マーラーが自身の死を予感しながら作曲した「別れと死」の匂いの強い曲である。最後のクライマックスが終わって、音楽が静けさへと昇華していく中、それが鳴った。あまりにも絶妙な、あまりにも最悪なタイミングであった。
スマートフォンが鳴ったのは、前列の左の方。年配の男性が電話の鳴るままに身じろぎもせずにいたと言う。電話は、そのまま3分~4分も鳴り続けていた。あるブロガーによれば、それはまるで電話の音ではなく、アラームのように聞こえたそうだ。
指揮者のアラン・ギルバート氏は、その男性に向かい「終わりましたか?」と聞いたが、何の返事も得られず、とうとう「分かりました。待ちましょう」と言って指揮棒を置いてしまった。その後携帯電話は何度か鳴って止まったそうだが、観客数人からは、「3000ドルの罰金だ!」「奴を追い出せ!」という激昂した声が上がったという。
後にギルバート氏は、雑音が入っても通常は演奏を続けるものだが、あまりにもひどかったため中断したと語った。しかし、そのような状況でも決して揺るがないそのプロフェッショナルな姿勢に、多くの人々は賞賛を惜しまなかった。
あるクラシック音楽のファンはツイッターでつぶやいている。「スマートフォンはスマートに使え」と。スマートフォンは上手に使えば便利だが、くれぐれも人に迷惑をかけないよう注意したいものである。
ニューヨークフィルハーモニー管弦楽団