昨年末の第62回NHK紅白歌合戦は、今までの紅白と少し趣が違っていた。そう、東日本大震災の爪痕を残す被災地を思う歌が多かったのである。
西田敏行と猪苗代湖ズ
地震と津波と原発事故の三重苦で、美しい自然を失い、いまだ故郷に帰れない福島の人々たち。人々の心を癒そうと立ち上がったのが西田敏行と猪苗代湖ズだ。
西田は、福島県郡山市出身の大俳優。その美声は歌にも生かされており、「もしもピアノが弾けたなら」で第41回紅白歌合戦を彩った。今回は21年ぶりに「バトンタッチ/あの街に生まれて」を熱唱、温かい声で福島の人々を勇気づけた。
一方、猪苗代湖ズは、福島県出身の4人のミュージシャン(サンボマスター山口隆、THE BACK HORN 松田晋二、TOKYO No.1 SOUL SET 渡辺俊美、風とロック 箭内道彦)から成るバンド。紅白では「I love you & I need you ふくしま」とシャウトし、魂のこもった歌で、福島への愛と励ましを伝えた。
この両者の歌は、とりわけ視聴者の心に響いたに違いない。今年に入って、1月6日付オリコン週間シングルランキングでは、西田敏行の「バトンタッチ/あの街に生まれて」が、前週の200位圏外から100位に急上昇。また、猪苗代湖ズの「I love you & I need you ふくしま」は、前週44位から30位に上昇した。
大震災から早くも10か月が経過し、被災地への思いが少しずつ薄れていっているように思う。福島県出身の歌手たちが、紅白での熱唱によって改めてその思いを思い出させる形となったのではないだろうか。
第62回NHK紅白歌合戦西田敏行猪苗代湖ズ