経済的な心配ががんを悪化させる
がん患者とその家族にとって、経済的な負担が精神的・肉体的な健康悪化につながる。こんな研究結果を米シカゴ大学の研究者が発表した。
時間とともに増す心配
研究を行ったのは、シカゴ大学医学部で臨床心理士および倫理学者として勤務するFay Hlubocky氏ら。進行がんの患者およびその配偶者に話を聞いたところ、4/5が医療費の負担による家庭の経済状態悪化を心配していることがわかった。
研究対象となったのは、進行性のがんを患う患者52人とその配偶者。患者の年齢は28歳~78歳におよび、中央値は61歳だった。約2/3が高卒以上の学歴を持つが、約半数の年収は6万5,000ドル以下にとどまる。
研究開始当初、患者の82%、配偶者の69%が「医療費」について語った。さらに患者の79%、配偶者の81%が医療費が家計に緊迫状態をもたらしていることを告白した。
1か月後の聞き取りでは、医療費関係について語る患者が85%に、配偶者は72%にそれぞれ増加した。
駐車場代まで心配
経済的な心配の内容は多岐にわたった。移動に伴う駐車場代やホテルの宿泊費などの「小さな出費」から、保険で支払われる分の不足や死後家族を扶養する手段がないことまで、あらゆる経済的な負担が心配の対象としてあげられた。
がん治療にはそのほかにも、交通費や仕事を休むことで失われる収入、子どもを預ける託児費用、在宅で使用する医療機器のコストなどが含まれる。
こういったコスト負担を心配することで、患者やその家族にうつ病の傾向がみられるケースもあった。
ソーシャルワーカーに相談を
がん患者や配偶者が持つ心配事の解決策として、研究者らはソーシャルワーカーの利用をすすめる。
がん治療においては、病気であることおよび治療の苦痛が大きなストレスとなる。医学的な支援に精神的な支援を加えることは非常に重要な意味を持つ、と研究者らは指摘した。
研究結果は今週シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次会議にて発表された。
◆healthday
http://consumer.healthday.com/Article.asp?AID=665451