史上初の決断を迫られるFDA、予防薬は承認されるか?
食品医薬品局(FDA)の諮問委員会では今週、HIV陰性であるが、感染のリスクが高い人たちに対する予防薬を推奨するかどうかについての初の決定を行う。
この薬品はギリアド·サイエンシズ社(Gilead Sciences Inc)のHIV治療薬ツルバダ(Truvada)。ツルバダは、HIVの体内での増殖を妨害する2種の薬の合剤で、現在世界で最も大きなシェアを持っており、年間約14000ドル分が市場に出回っている。同社はFDAに対して、この薬を予防薬として用いる許可を申請している。企業から、HIV治療薬を新規感染の予防薬としての承認許可を申し入れるのは、歴史上初めてのケース。現在この承認をめぐり議論が沸騰している。
臨床研究上は予防薬としての利用に様々な肯定的データ
いくつかの臨床研究では、この薬を服用すると、実質的にHIV感染の人のリスクを下げるとされている。
ギリアド社からは申請にあたり、ツルバダを暴露前の感染予防として用いることに対して行われた、2つの大規模な臨床試験の結果が資料と提出されている。ツルバダを予防に用いた研究では、ゲイやバイセクシャルの男性を対象にした研究では、感染リスクが44%減、一方がHIV陽性の異性愛カップルを対象にした調査では、感染リスクが73%減という説得力のある数字が発表されている。
推進派は、予防薬こそこれまで望まれてきたものと絶賛し、究極の予防薬であるワクチンの開発に成功するまでは、現状での最善策であると主張している。
データの如何に関わらず、FDAが承認を拒否することで、新たなHIV予防への開発意欲を削ぎ、今後研究が積極的に行われなくなることを懸念する声も上がっている。
反対派の多くはデータの不足を指摘
しかし、医療専門家やエイズ活動家はギリアドの今回の申請について意見が分かれている。その理由の多くが、検討に十分なだけの臨床データが集まっていないというものである。
特に、女性を対象にしたツルバダのHIV感染予防の研究は、それほどの成果を上げていないのが現状。アフリカで女性を対象に行われた研究では、効果が低いとされて、昨年調査そのものが中断されている。
この現状について、データ不十分のまま承認に至る可能性をの危険性を指摘している専門家もいる。女性に対するデータが十分に集まれば、あるいは別のタイプの薬剤が予防により効果的だという結果になりかねないためである。
実情としては、広まりつつある予防的利用
しかし、承認に消極的な医師を含め、すでに多くの医師たちが、一方がHIV陽性で、子どもがほしいと願っているカップルなど限定された状況下でツルバダの処方を行っている。
昨年、疾病管理予防センター(CDC)は、ゲイやバイセクシャルの男性のための新規感染予防として、ツルバダを使用するための暫定的なガイドラインを発行している。 CDCは、異性愛者に対しても同様のガイドライン作成に取り組んでいる。
米国では、約120万人がHIVに感染しており、毎年約5万人の新規感染が報告されている。予防薬承認の最終決定に向けて注目が集まる。
The Wall Street Journal ; FDA Panel Considers HIV Drug For New Use
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304020104577384502756088234.htmlTruvada
http://www.truvada.com/