秘かに貯蔵される劣化ウラン
工場火災が起きるだけで、首都圏に人が住めなくなる。22日に発生した三井化学岩国大竹工場の爆発事故以来、こんな情報が拡散しつつある。全国の化学工場などに秘かに保管されている劣化ウランが、その原因だ。
火災がもし劣化ウラン倉庫におよんでいたら
22日未明、山口県和木町にある三井化学岩国大竹工場で、タイヤの接着剤を製造するプラントが爆発した。
爆風はすさまじく、作業員1人が死亡、11人が重軽傷を負ったほか、周辺の住宅では窓ガラスが割れるなどの被害が発生、住民6人が負傷した。
また爆発により発生した火災はなかなか鎮火せず、午前8時すぎには、プラント内にあるタンクも爆発した。
実は同プラントには、劣化ウランを保管する倉庫がある。もしこの倉庫にまで火の手がおよんでいたら、福島第1原発周辺と同じく、放射性物質による深刻な汚染が発生した可能性があるという。
内部被曝をひき起こす劣化ウランの恐怖
劣化ウランはウランを精製した後の残りかすのようなものだ。密度が非常に高いことから、戦車の砲弾など、武器に用いられる。
たいへん燃えやすく、気化したものを吸い込むと、軌道などに沈着してアルファ線を放射し続け、深刻な内部被曝を起こす。
湾岸戦争では、自国の劣化ウランによって被曝した米兵に、多くの犠牲者が出ている。
国内195か所にこっそり貯蔵
全国の化学工場などには、実は劣化ウランなどの核廃棄物を貯蔵する施設が多い。その数は195にのぼり、今回事故を起こした三井化学岩国大竹工場では、200L入りのドラム缶換算で3,379本分を保管している。
その他、大都市に近いエリアでは、埼玉県にある「三菱マテリアル(株)大宮総合整備センター」には30,910本、大阪の三井化学大阪工場には1,889本が眠っているとされる。
かつては化学反応を起こすための触媒として利用されていた。現在ではほとんど利用価値がないが、処分方法がないため、秘かに保管され続けている。
1960年代後半から1970年代前半にかけて米軍から流出したものといわれるが、民間企業に渡った経緯はあきらかにされていない。
もし大量の核廃棄物を貯蔵する埼玉県の工場などで火災が発生すれば、風向きによっては首都圏が深刻なレベルまで汚染されることも十分に考えられる。
◆平成20年度放射性廃棄物管理状況
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/news/genshiro_anzenkisei/__icsFiles/afieldfile/2009/09/07/1284216_3.pdf◆三井化学岩国大竹工場
http://jp.mitsuichem.com/corporate/group/domestic_05.htm