スーパーの独自基準はNG
農林水産省は20日、外食産業やスーパー、食品メーカーなどの業界団体に対して、独自の放射性物質基準を設けないよう通達を出した。各業者が国の基準より厳しい独自の基準を設ける動きに歯止めをかけようというものだ。
放射性廃棄物と同じレベルを食え
農林水産省では食品を扱う流通業者など対して、セシウムなど放射性物質の汚染ついて、国の基準に基づいて判断するよう通知を出した。
今年4月から改正された基準では、野菜などの一般食品は100ベクレル/kg、乳幼児用の食品と牛乳は50ベクレル/kgとなっている。
通達の中で、この基準値は国際的な基準として認められているコーデックス委員会基準よりも厳しいものであるため安心するよう説明されている。
ただ、コーデックス委員会の基準値は、セシウムだけでなく、ストロンチウムやプルトニウムなど、他の放射性汚染物質についても加算した値だが、我が国ではセシウム以外の汚染は、ほとんど計測されていない。
100ベクレル/kgという数値はまた、放射性廃棄物として国内法でも移動などを禁じられるレベルの汚染度合いである。
安全を無視した「安全基準」をごり押しする姿勢に、昨年9月には東北文教大学の松田浩平教授が「原発から320kmの食品移動の禁止」を提言したほどだ。
農林水産省が行っている「食べて(被災地を)応援しよう」というキャンペーンについても、「毒入りで10年後には死んでいるかも知れませんが、食べてくださいと言っているに等しい」と断じている。
混乱しているのは「国民」か?
今回の通達について、農林水産省は「過剰な規制と消費段階での混乱を避けるため」と説明している。
同通達に対して全国農業協同組合中央会の冨士重夫専務理事は「100ベクレルで大丈夫だという説明を国が責任を持ってやるべき」とコメントした。
移動すらしてはいけないものを「食べるべし」とする矛盾を国はいっさい説明していない。そもそも混乱をきたしているのは消費段階ではなく、国家の方針だ。
小狡い「信頼できる分析の要件」
独自基準を設けないよう求める通達と同時に、農水省では「信頼できる分析の要件」なる文書を発表している。
要するに、「この条件に合致しない独自分析は信頼できないものであり、中止すべき」とアピールするための文書である。
つい先日も愛知県の幼稚園で子どもたちが食べていたシイタケから1400ベクレル/kgの汚染が発見されたばかりだ。
現在、国が行っていると主張する検査から漏れる食品は、あまりに数多い。たとえ数10%の誤差を生じる検査であっても、しないよりした方がよいのは明白だ。
こういった小狡い姿勢が、国民の不信をもはや抜き差しならないところまで深めた原因であることをまったく認識していないようだ。
◆食品中の放射性物質に係る自主検査における信頼できる分析等について
http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/ryutu/pdf/kyoukucho.pdf