風邪薬は病気を長引かせる?
風邪などの感染症を発症した際、なるべく解熱剤を使わない方がいい、といわれる。日本の研究グループが、この発熱が免疫力を増強するシステムを解明した。
熱でマクロファージが活性化
研究チームが注目したのは、細胞膜に存在する陽イオン透過チャンネル(TRPM2)。病原体などを食べるマクロファージのはたらきを増強するものだ。
通常、このTRPM2は48℃以上にならないと活性化されないが、活性酸素に触れると、活性化する温度が37℃程度まで下がることが今回の研究で判明した。
人が病原体に感染すると、体内のマクロファージがこの病原体を食べる。このとき活性酸素が放出されることでTRPM2が活性化される。
さらに体温が38.5℃くらいまで上昇すると、TRPM2は最大限に活性化され、マクロファージが病原体を食べるはたらきをマックスまで増強する。
同研究を発表したのは、自然科学研究機構生理学研究所・岡崎統合バイオサイエンスセンターの加塩麻紀子研究員と富永真琴教授らのグループ。
9日付けの米国科学アカデミー紀要(PAS)オンライン版に掲載された。
健康状態を確認しながら薬の投与を
今回の研究により、発熱が免疫力を増強するシステムが解明された。風邪薬などを安易に使用すると、かえって治りが遅くなるようだ。
ただ、発熱の程度や体力の衰えによっては、熱によるダメージを心配すべきケースもあるため、薬の使用・不使用には医師などの専門家による判断が必要だ。
◆自然科学研究機構 生理学研究所
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2012/04/-trpm2.html