40年前のランダム化比較試験を再解析
リノール酸は不飽和脂肪酸の中の多価不飽和脂肪酸に分類される油で、コレステロール値や血圧を下げるとして注目されてきた。
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米国立衛生研究所(NIH)のChristpher E. Ramsden氏らの研究チームは、リノール酸の摂取量を増やすと、心血管や冠動脈疾患死亡リスクが上昇する可能性があることを2月5日、英医学誌「British Medical Journal : BMJ」オンライン版に発表した。
研究では、豪州で約40年前(1966~73年)に行われたランダム化比較試験(RCT)を再解析した。対象者は30~59歳の心臓疾患を持つ男性458人で、食生活非介入の対照群と飽和脂肪酸の代替としてリノール酸(例えば紅花油やマーガリン)への切り替え(15%程度)を指導した介入群で全死亡リスクなどを検討した。
その結果、心血管リスクが低下するどころか、死亡リスクが上昇した。
オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸
リノール酸を摂取した介入群は、対象群と比べて全体的な死亡リスクのハザード比が1.62だった。また、心血管死亡リスクのハザード比は1.70、冠動脈性心疾患のハザード比は1.74だった。
今回の研究結果は、「飽和脂肪酸を多く含む動物性脂肪を、多価不飽和脂肪酸の豊富な植物性脂肪に切り替えることで心疾患リスクが抑制される」という世界の常識に反する結果である。
リノール酸は、人体で合成できないオメガ6という必須脂肪酸で、確かに人間にとって必要不可欠な脂肪酸である。だが、オメガ6脂肪酸の過剰摂取により、炎症を促進することが考えられていた。反対にオメガ3脂肪酸には炎症を沈める効果がある。
英サウサンプトン大学のPhilip C. Calder教授は、「オメガ6脂肪酸の過剰摂取を控えるのには理由があるが、オメガ6脂肪酸というよりも、オメガ3脂肪酸とトランス脂肪酸が血管保護に決定的な役割を担っているのではないか」とコメントを寄稿している。(太田みほ)
英医学誌「British Medical Journal : BMJ」
http://www.bmj.com/