最新の遺伝子操作技術により 新たな治療法を発見
新たな白血病治療法で末期の白血病患者の
がん細胞が死滅や激減したとの研究結果が10日、アメリカの医学誌「
サイエンス・トランスレーショナル・マガジン」と「
ニューイングランド医学ジャーナル」で同時発表された。
この治療法とは、患者から採取したリンパ球の一種である「
T細胞」に遺伝子操作を行って「
キラー細胞」に改変させ、がん細胞を攻撃して死滅させるという新たな治療法である。アメリカの
ペンシルベニア大学が研究を行っている。
3人に行った治療で2人のがん細胞の死滅を確認
この新治療法を3人の慢性リンパ球性白血病患者に施したところ、2人のがん細胞が死滅したという結果がでている。
そのうちのひとりである64歳男性は、血液と骨髄に約3キロ分のがん細胞があった。治療開始後、しばらくは何の変化もなかったが、その後
14日目に吐き気、悪寒、高熱などの体調不良を訴えるようになった。
検査の結果、改変を行ったT細胞の数が急増していることが判明、体調不良は
がん細胞が短時間に大量に死滅することで起こる症状だと分かった(腫瘍崩壊症候群:しゅようゆうかいしょうこうぐん)。
この男性は治療開始から28日目に回復し、
がん細胞は全て死滅していて発見されなかった。
1年後の検査でもがん細胞は検出されなかったという。
今後は他のがんへの有効性を調査
現在、白血病の唯一の治療法は
骨髄移植であるが、長期間の入院を必要とし、
死亡率は約2割と高く、完治率も5割程度である。
まだ研究途上ではあるが、この新しい遺伝子導入治療が将来的に白血病患者はもちろん、他のがん患者にとっても
「がん克服」への希望の光となるかもしれない。
University of Pennsylvania(ペンシルベニア大学)T Cells with Chimeric Antigen Receptors Have Potent Antitumor Effects and Can Establish Memory in Patients with Advanced Leukemia (Science Translational Medicine) -サイエンス・トランスレーショナル・マガジンより-
Chimeric Antigen Receptor–Modified T Cells in Chronic Lymphoid Leukemia &mdash (New England Journal of Medicine)-ニューイングランド医学ジャーナルより-
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