横浜市大研究グループが「トラウマ」を初解明
横浜市立大学(神奈川県横浜市:以下同大学)の研究グループが11日、強い恐怖や嫌悪といった「トラウマ」となる記憶ができる細胞メカニズムを世界で初めて解明した。この研究結果は12日、米科学アカデミー紀要(オンライン版)にも掲載されている。
「シナプス」という神経と神経のつなぎ目の働きに注目
この研究に携わったのは、同大学先端医科学研究センター:高橋琢哉教授が率いる研究グループ。神経細胞間をつなぎ、情報伝達の中心を担っている「シナプス」の働きに注目、記憶をつかさどる「海馬」との関係に注目した。
実験にはラットを使い、特定の場所に来た時に電気ショックを与えると、ラットはその場所に近づくことはなかったが、これは恐怖を体験した後に情報の伝達に関わる「AMPA受容体」というたんぱく質が増え、シナプスに移行するよう変化したことによるものであった。
逆に移行をできないようにしたラットでは、恐怖体験の記憶が作られず、再び電気ショックのある場所に近づいていくことが確認された。このことにより、AMPA受容体のシナプス移行が恐怖記憶の形成に必要であるということが明らかになった。
メカニズム解明により新しい治療法も開発されると期待
強いトラウマとなるような記憶は人間では心的外傷後ストレス障害(PTSD)や対人恐怖症などの精神障がいを引き起こす。この仕組みを明らかにしたことで、このような社会性障害の治療法開発の糸口になると期待される。
横浜市立大学 YCU横浜市立大学 記者発表資料(PDF)米科学アカデミー紀要 オンライン版
-Proceedings of the National Academy of Sciences-